2014年05月12日

「李歐」のこと

 高村薫作「李歐」を再読した。何度目かの再読になる。大阪に一時復帰して二回目になる。桜の季節に読みたくなる小説だ。

「李歐」のこと

 まずもって不思議な小説だ。ハードボイルドの体裁をとりながら、実は男と男の恋愛小説だ。といっても、男色小説でもない。といっても、やはり男同士の友情の物語ではない。主人公の一彰と李歐に友情が芽生えるような動機は存在しない。一彰がなぜ李歐という男に固執するか、はっきり描かれていない。狂っているようにさえ思える。ゆえに、これは恋なのだ。恋に理屈はない。それは発火するほどの熱だ。拳銃の話も、国家間のスパイの話も、終わってしまえばどうでもいいようにさえ思う。この小説を好きな人々は、熱に浮かされた経験のある人物なのだろう(それは僕自身も例外ではないのだろう)。




  • LINEで送る

同じカテゴリー(書評)の記事
リヴィエラを撃て
リヴィエラを撃て(2014-03-30 11:37)

虐殺器官
虐殺器官(2010-12-17 22:12)


Posted by 仲村オルタ at 22:57
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

マイアルバム
プロフィール
仲村オルタ
仲村オルタ
職業:書き物一切。
職人のごとくただ書くのみ(としたい)。
公式サイト alt99.net
台湾より沖縄復帰後1年で関西へ。まさかの東京暮らしを経て、流れ流れて今は沖縄暮らし。
オーナーへメッセージ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 11人
アクセスカウンタ