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Posted by TI-DA at

2020年01月01日

2019年極私的映画ベスト20 その3(10位から1位と特別枠2)

 2019年の極私的映画ランキング、いよいよトップ10。と、その前に特別枠から。

◆特別枠2 ブレードランナーIMAX 監督:リドリー・スコット
 新聞やテレビの今年の沖縄の十大ニュースに選ばれないが、極私的には「沖縄にIMAX映画館が登場」がトップ10の上位に入る。そのおかげでこの歴史的名作をIMAXで見ることができたし、スター・ウォーズ新作もIMAXで見た。客足不調が言われるパルコ・シティだが、なんとかこの映画館だけでも残ってほしい。
 公開当時には世間の評価もそれほど高くなかったとされるリドリー・スコットのこの傑作SFノワールハードボイルドだが、IMAXで観て、重低音に圧倒され、吸い込まれるような漆黒の黒さに目を見張り、レプリカントの悲哀に心をかき乱される。個人的にはカタギ仕事のゴタゴタで何もかもうんざりしていた時期に観ただけに、その創作意欲と完成度にあらためて感動し、救われた1本だった。


第10位 ジョーカー ★★★+ 監督:トッド・フィリップス
 実は今年最高の期待作だった。評判もいい。R15にも関わらず興行収入もいい。しかし、極私的には泣けなかったし、感情移入できなかった。ジョーカーは狂気そのものであり、バットマンと対をなすものであり、意味や動機づけを行うことは興ざめな気がしたのがひとつ(それでいてブルース・ウェインを出すのはフェアじゃない気がした)。バットマンもジョーカーも同じ狂気であり、その裏表でしかない。それを裏だけ強調されても、なにか足らないのだ。あとは精神疾患を抱えるものを笑い、追い詰めていくその展開に、興ざめしたのだ。この映画は不条理ではない。ジョーカーには狂気に走る理由がある。その根本が疾患であるというのは、創作的にどうかとは思う。この映画のあちこちにあるように、現実と幻想がもっと複雑に入り乱れて、意味を求めず、感情を求めつづければ、傑作になったのかもしれない。極私的には今年もっとも残念な一本でもある。


第9位 ブラック★クランズマン ★★★+ 監督:スパイク・リー
 スパイク・リーの復活?作。白人至上主義団体(KKK)に潜入する黒人警官の話だ。80年代終わりから、90年代初頭にかけて、何本も傑作を生み出し時の人となったスパイク・リーも、しばらく名前を聞かなくなる。2006年に傑作「インサイド・マン」を撮るが、フローティング・ドリーショットhttps://alt.ti-da.net/e11018441.html 以外は、スパイク・リーらしさを感じない。ここしばらくは日本で公開もされなかった。そこへこの傑作がリリースされた。久しぶりにアカデミー賞も受賞し、授賞式でもスピーチした。スパイク・リーは作品賞を受賞した「グリーン・ブック」を批判したというが、確かにブラック・クランズマンのほうが創造欲に満ちた良作だ。


第8位 火口のふたり ★★★+ 監督:荒井晴彦
 今年も観た日本映画は数本もないが、このR18映画は極私的に創作意欲がかきたてられるものだった。映画鑑賞直後に白石一文著の原作も読む。全編にわたり濡れ場が多いが、綺麗だとは思えても、あまりいやらしくはない。あまりエロすぎるように撮らないのもテクニックなのだろう。結婚直前の女と、離婚して身体の言い分から遠ざかっていた男。身体の言い分をきいて、ふたりは退廃的で破滅的な数日間を、食って、寝て、やりまくる。本能の前に、道理はただ平伏すしかない。これも登場人物の少ない戯曲的な映画だ。荒井晴彦監督は、自身で脚本を書いて撮った作品を何本か観てみたい。


第7位 移動都市/モータル・エンジン ★★★+ 監督:クリスチャン・リヴァース
 ピーター・ジャクソン製作・脚本、ロード・オブ・ザ・リングなどで特殊効果を務めたクリスチャン・リヴァースの初長編監督作品となった本作は、総じてあまり評判はよくない。だが、つまらなかったかというとそうでもないし、移動都市と反移動都市連盟の戦争も迫力があり、復活者シュライクのキャラクターも実にいい。
https://alt.ti-da.net/e10981883.html


第6位 ジョン・ウィック チャプター3 パラベラム ★★★+ 監督:チャド・スタエルスキ
 2015年に公開されたジョン・ウィックを観て、誰がシリーズ化されることを予想しただろう。死んだ奥さんから送られた愛犬を殺された元殺し屋が、個人的な復讐だけでなく組織そのものを破滅させる、というよくありがちとも言えるストーリーで、たしかにGun-FU(ガンフー)と言われるアクションは新鮮だったが、ごくごく普通の映画だった。それがまさかのチャプター2、そしてチャプター3と、2年に1本のペースで順調に製作されており、本数を重ねるごとに、キャラクターが増え世界観がより厚くなる。ガンフーもさらに好調で、特に本作ではなぜかニューヨークを馬に乗りながらガンアクションするシーンが馬鹿馬鹿しくて最高だった。


第5位 サマー・オブ・84 ★★★1/2+  監督:RKSS
 フランソワ・シマール、アヌーク・ウィッセル、ヨアン=カール・ウィッセルら、カナダの映像制作ユニット「RKSS(ROADKILL SUPERSTARS)」が、1980年代のホラー映画、サスペンス、スラッシャー、そして青春映画にオマージュをささげた映画『サマー・オブ・84』。
 思わぬ衝撃作だった。後味の悪い映画として有名なものは、セブン、ミストなどが挙げられると思うが、個人的にはこの映画のラストの展開はセブン以来久しぶりの「トラウマ級」の衝撃だった。少年少女の連続誘拐殺人事件を解決しようとする少年たちのseek&find。物語は予定調和として落ち着くかと思った矢先に、まさかの展開に度肝を抜かれる。このエンディングを見つけ出したことが、この若き映像作家たちの勝利だろう。全編を貫くダークなテクノもいい。


第4位 アリー スター誕生 ★★★1/2+ 監督:ブラッドリー・クーパー
 破滅的な主人公(たいていは男、そういえば破滅的な女主人公の物語はないのかも)の物語が、どうやら個人的なツボらしい。自己犠牲というには身勝手な選択だが、自己の破滅は相手を思ってのことだ。
 去年のボヘミアン・ラプソディー以来、音楽映画が多く公開されており出来もいいのだが、このリメイク版スター誕生も傑作だった。レディー・ガガの歌と演技も良かったが、驚いたのはブラッドリー・クーパーの歌だ。音楽はもちろん素晴らしかったが、プロットも良かった。もっと身勝手に描くことができたアリーを動かない北極星とした設定も成功している。


第3位 バーニング(劇場版) ★★★★ 監督:イ・チャンドン
 村上春樹作「納屋を焼く」を韓国の映画監督イ・チャンドンが脚本、監督をつとめたこの映画は、短編ゆえの「放り出し」感を生かしたまま、90分の映画としての創造性を両立させている。納屋ではなくビニールハウスを焼くのだが、村上春樹の世界観を尊重し、離れないまま、独自の作家性を描く。セリフ、映像、小道具などいろいろなものがなにかのメタファーと思える。「蜜柑があると思うのではなく、ないということを忘れればいい」、世話を頼まれた姿を見せない猫、子供の頃に落ちた存在しない井戸、リトル・ハンガーとグレート・ハンガー、何度もかかってくる無言電話そしてビニールハウスを焼くという趣味。マイルス・デイヴィス「死刑台のエレベーター」をBGMに、沈みゆく夕日に向かって、上半身裸でグレート・ハンガーの踊りを踊るヘミのシルエットの美しいこと。映像の美しさもあり、何度も観返してみたい傑作だ。


第2位 ローマ Roma ★★★★ 監督:アルフォンソ・キュアロン
 アルフォンソ・キュアロンはこの極私的ランキングでは1位の常連だ。寡作だが、2007@年のトゥモロー・ワールド、2012年ゼロ・グラビティ と年間1位を取り続けている。映像のセンス、ストーリーテリング、エンターテイメントと作家性の両立そのすべてにおいて、現代を代表する映画監督であることは異論はあるまい。
 NETFLIXにて公開されたこのローマも素晴らしかった。全編モノクロの美しいプリント、構図や映り込みタイミングなどが完璧に計算されたカメラワーク、淡々と進むなか突如として感情があふれるクライマックス(もちろん号泣した)。この映画こそIMAXでみたいが、最近はスコセッシもコーエン兄弟もみんなNETFLIXで映画を撮る。製作者にとっては儲かり、作家にとってはいろいろな自由度があるのだろうと思う。もしも、この映画を映画館で観たなら、あの波打ち際のシーンを大画面で観ていたなら、3作連続1位だったかもしれない。そう思える傑作。


第1位 ロケットマン Rocektman ★★★★ 監督:デクスター・フレッチャー
 2位のローマと迷ったあげく、結局エルトン・ジョンの半生を描いたミュージカル・ファンタジーを年間1位に選んだ。映画としてはローマのほうが評価も高いのだろうが、心にズシンとくる影響力は個人的にはこの映画のほうが強い。エルトン・ジョンの音楽が素晴らしいのは言うまでもないが、この映画の根底にある孤立、孤独に共感するからだろう。映画を観終えても、音楽を何度も聞くことで、またこの映画に戻ってくる。たいていのものを手に入れた天才ロック・スターも、おそらくは本当に欲しいものは手に入れられない。タロン・エジャトンの演技もよかった。


 来年はYouTuberにつづき、この映画評論もプロジェクト化しようか思案中。
  
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Posted by 仲村オルタ at 00:00

2019年12月31日

2019年極私的映画ベスト20 その2(20位から11位と特別枠1)

 昨日に続き、2019年の映画ベスト20。20位から11位には、思索的なSFや大御所の映画が並んだ。

◆特別枠1 マトリックス4DX 監督:ウォシャウスキー兄弟(今姉妹)
 エポックメイキングな映画がある。映画の面白さで、時代を作る映画だ。これらの映画はその後しばらく「○○に次ぐ」とか「あの○○を超えた」というように、ベンチマークされ、宣伝に利用される。例えば、80年代以降ではダイ・ハード、シックス・センス、タイタニック、アバターなどなど。
 サイバーSFジャンルでは、やはりこのマトリックスだろう。今回は沖縄にできたユナイテッドシネマの4DXにて、家族で鑑賞。やはり素晴らしい。哲学と、カンフーアクションと、トリッキーな撮影による映画的快楽。もうおそらくは10回目くらいになるこの映画を古く感じることもなく楽しんだ。息子はその後しばらくの間、Rage Against The Machineばかり聴いていた。


第20位 アニアーラ ANIARA ★★★ 監督: ペッラ・カーゲルマン&フーゴ・リリヤ
 スウェーデンのノーベル文学賞受賞作家ハリー・マーティンソンの代表作「アニアーラ」を実写映画化したスウェーデン製SF大作。大作とはいえ、19位にでてくるセルビアSFと同様に、哲学的で思索的だ。火星移住のための乗客をのせたアニアーラ号は、故障のため軌道をはずれ、宇宙をさまよう。自暴自棄になった乗客は、快楽に溺れたり、人工知能を神と崇めたり。そこへ救出船が近づくのだが、それはまるで石棺のようだった・・・というもの。はっきりした解の提示を求めないが、やや放り出し感が強すぎるように感じる。原作も読んでみたいのだが、たぶん途中でやめてしまいそうだ。


第19位 A.I.ライジング ★★★ 監督:ラザール・ボドローザ
 セルビア発のSF作品。孤独の任務に同行したアンドロイドに恋をして、人間の女とする欲望を抱いてしまった中年宇宙飛行士の話。設定が良いが、最後はやはりアシモフのロボット工学三原則に帰着するやや凡庸な終わり方だった。SF作品は哲学とも、情愛とも等距離で成立することをあらためて感じる。文字で読んでみたい映像だが、文章にするとおそらくまわりくどく小難しくなってしまうのだろう。


第18位 ハイライフ ★★★+ 監督:クレール・ドニ
 これも難解で哲学的なSF映画だ。この3本はどれも性愛を扱い、倫理を問い、自分自身と向き合うことを要求する。囚人をのせ、ブラックホールへと向かう宇宙船での出来事。アニアーラ、AIライジング同様に、宇宙船は彼らにとって世界のすべてであり、そこから抜け出すことはできない。その密室において、乗組員は性的な接触を禁じられており、女医だけが神のように君臨している。同じシチュエーションでまったく別の話も書けそうな気もする。今年はブラッド・ピットのアド・アストラや、デイミアン・チャゼルのファースト・マンもあったが、このハリウッド作2本より、ヨーロッパ系のこの3本のほうが、極私的には深い思索に落ちることができた。主演のロバート・パティンソンは、次のバットマンに決まったという。ジュリエット・ビノシュの爬虫類のような背中が妙に印象的に一本だ。


第17位 アリータ:バトル・エンジェル ★★★+ 監督:ロバート・ロドリゲス
 この映画も興行的にも、批評家的にもうまくいったとは言えない(ただし世界興行収益としては中国であたったようで悪い成績ではない)。ジェームズ・キャメロン他脚本、ロバート・ロドリゲス監督作品で映画館に足を運ばないわけがない。不自然で多すぎるアリータの目が気味悪いせいだとか、原作を活かしきれなかったキャラ設定のせいだとかいろいろ言われるが、単純にロドリゲス向きではなかったのかもしれない。木城ゆきとによる原作「銃夢」びファンが多いようで、日本の原作ファンにはあまり評判が良くないようだ。原作は読んでいないが、ロドリゲスファンの僕としては、展開やキャラ設定は面白いが、やや物足らない感じだ。アバター続編を前に今年のキャメロン印は二発とも不発だったが、アバター不発、というのはなんとしても避けたいところだ。


第16位 世界の涯ての鼓動 ★★★+ 監督:ヴィム・ヴェンダース
 久しぶりのヴィム・ヴェンダースの長編のような気がする。いくつか撮ってはいるようだが、個人的には2000年のミリオンダラー・ホテル以来19年ぶりのヴェンダースだ。とはいえ、この映画は映像的な隙間の多いかつてのヴェンダースのスタイルで撮られてはいない。良い意味でも悪い意味でもハリウッド的な、ストーリーを語る意志を直接的に感じる作品だ。それでいて、ストーリーが進むのが遅いので、全体の印象はぎこちないものだが、美しい画面のなかで、アリシア・ヴィキャンデル(この映画のアリシアはなんと美しいのだろう)とジェームズ・マカヴォイのふたりが戯れる絵は、今年観た映画のなかでも強く印象に残るものだった。


第15位 ハウス・ジャック・ビルト ★★★+ 監督:ラース・フォン・トリアー
 こちらも寡作ながら公開すればトップ10常連のラース・フォン・トリアー監督の新作。シリアル・キラーを題材にしたこの映画を観終わって最初に思ったのは、この映画は語られるべきものなのだろうか、ということだ。言い換えれば、トリアーは何をいいたいのだろう、とトリアー贔屓の僕でもそう思う。前作ニンフォマニアックも、冷静に考えれば同様に「これは語られるべきなのだろうか」と思えるものだ。映画のなかの出来事にことさら倫理を訴えるつもりもないが、さすがに罪のないこどもが撃ち殺されるシーンには辟易した。「人はだれでもシリアル・キラーになれる。もしこの映画にメッセージがあるとすれば、そういうことになるだろうな」とトリアー自身が語っているのだから、もうどうしようもない。生理的に受け入れるか、受け入れられないかを迫る映画なのだろう。観終わったあと、ボウイのフェイムが頭の中でグルグル回っていた。


第14位 ドクター・スリープ ★★★+ 監督:マイク・フラナガン
 スティーブン・キング原作、スタンリー・キューブリック監督の映画「シャイニング」が公開されたのが1980年。それから29年を経て出来上がった続編「ドクター・スリープ」は、ターミネーター:ニューフェイトと同様に興行的にも、批評家的にも失敗と言われるが、極私的には観ている間楽しかった映画だ。楽しいというのは変な言い方だ(実際に野球少年が殺されるシーンは辛かった)が、前作に創造性を巡って対立したというキングとキューブリックの作品感を仲裁しつつ、そのいずれにも愛情を感じさせる映画となっている。オーバールックホテルへ向かう車を俯瞰で撮るショット、双子のショットなど、ただそれが出るだけで嬉しくなった。続編としては、当初想定していた続編でないことはよくわかる展開だったが、おそらくは特殊能力シャイニングをもっと探求したいと思ったときに、シャイニングを食って生きる種族を思いつき、物語をドライブさせたのだろう。


第13位 運び屋 ★★★+ 監督:クリント・イーストウッド
 いったいクリンスト・イーストウッドの創作意欲はどこまで続くのだろう。88歳にしてリリースされたこの監督・主演作は、このところの数作品に共通した肩の力の抜けた作品だ。まるでアメリカン・スナイパーで消耗した魂を、自ら静かに癒している。淡々と撮り続けるこの姿勢は、まるで習慣的に行きつけのカフェに通う日常を切り取っているかのようだ。2020年初頭にも、また監督作が公開される。映画的快楽がそれほど期待できなくとも、また映画館に足を運ぶことになるだろう。


第12位 バードボックス ★★★+ 監督:スサンネ・ビア 
 年末になると、NETFLIXは加入攻勢を強めてくるようで、年末に話題作をぶつけてくる。去年は12月にこの映画が配信され、ローマと合わせてみるために再加入した(観そびれていたコーエン兄弟のバスターのバラードも観た。年間トップ5に入るくらいに素晴らしかった)。見てしまうと、恍惚の表情を浮かべながら自殺してしまうという奇妙な病気が蔓延する設定は、一歩引いて考えれば荒唐無稽に思えるが、冒頭の川下りの逃亡シーンから引き込まれると、妙なリアリティがある。エンディングは予定調和だが、サスペンスフルで母親の強い愛が物語のドライブになる、終末映画ならではの現実感と虚無感のバランスがとてもいい。


第11位 ザ・プレイス 運命の交差点 ★★★+ 監督:パオロ・ジェノヴェーゼ
 戯曲的な映画だ。イタリアン人監督パオロ・ジェノヴェーゼの作品(この映画が良かったので、前作「大人の事情」も観た)。カフェの奥に座る預言者のような男。彼の元に問題を抱えた男女が多数やってくる。預言者はその悩みの解決(あるいは欲望の実現)に、なにか倫理的ではない行動や、無関係の他者の死などの犠牲を求める。それが登場人物感でぐるぐるまわり、結局は辻褄があって、いろいろな問題が解決する。俯瞰すれば、最初からパズルを組み合わせるだけの脚本だが、少しずつ小出しにしたり、伏線をはったり、緻密に計算された数学的な脚本の勝利といえるだろう。


 年が明けて、いよいよ明日はトップ10の発表を。  
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Posted by 仲村オルタ at 14:00

2019年12月30日

2019年極私的映画ベスト20 その1(圏外)

 今年一年は偶然のユーチューバーデビューをしたために、ブログ更新はほとんど出来なかった。この記事も3月以来となるのだが、来年はユーチューバー事業だけでなく、ブログ事業も起こそうかどうか思案中。昨年同様に年末駆け込みでみたDVDや配信動画を含め、60本以上の映画を観ている。そこで、本来はトップ20に入りそうな作品や、極私的評価はあまり高くないが一言いいたいもの、などをまず「語られるべき圏外作」として紹介する。
 対象作品は、原則、劇場公開が2018年12月1日から2019年11月30日までの公開映画だが、2019年11月27日よりNETFLIXにて配信開始したマーティン・スコセッシ監督「アイリッシュマン」は、配信開始が30日ギリギリかつ筆者の住む沖縄での劇場公開が12月下旬であったことも考慮して、2020年枠にいれることとした。

語られるべき作品(以下掲載順は順位ではない)

◆アベンジャーズ エンド・ゲーム ★★★ 
 アベンジャーズの最終章は、世界最高収益をあげているという。一方で、自作の宣伝かもしれないが、マーティン・スコセッシはあんなもの映画ではなく、テーマパークだ、という。スコセッシの言わんとしたいこともわからなくもないが、この映画のラスト近くの総決戦で、キャプテン・アメリカが「アベンジャーズ、アッセンブル」と叫ぶ場面は爽快だった。この映画といい、スパイダーバースといい、多元宇宙を描くものがこのところはブーム?のようだが、タイムパラドックスに慣れた僕としては、なんだかすっきりしない。


◆IT チャプター2 ★★★
 ITチャプター1は、冒頭のシーン(主人公ビルの幼い弟ジョージーがペニーワイズに殺されるシーン)を見ることができずに、飛行機の中でその先に進むことが出来なかったのだが、昨秋のチャプター2公開前にその場面を克服し、先に進むことが出来たので、無事このチャプター2は映画館(IMAX)で見ることが出来た。90年頃にテレビ映画で製作されたITでは、ITは人々が抱く恐怖の象徴から「ある姿」に具現化されるのが少し残念だったのだが、この新しいITではどうなるのかを見届けたかった。結論的には、今回の新しいITのほうが好感が持てた。IMAXで観ると、闇に深みがあり、音も迫力があってよかった。沖縄にIMAX映画館ができてほんとうに良かった。


◆グリーンブック ★★★
 アカデミー賞作品賞受賞。悪くはないが、設定といいエンディングといい予定調和で驚きがない。アカデミー賞はたいていこちら側にいるが、ときどきあちら側にふれる時がありそういうときは好みが一致する。そう、シェイプ・オブ・ウォーターや、アメリカン・スナイパーのように。


◆ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド ★★★
 出た、タランティーノお得意のラスト数分を語りたいための映画が。この映画の場合、全体が160分ある映画のうち、言いたいことが描かれるのはラスト13分あまり。シャロン・テート事件をなかったことにしたいだけの映画だ。ここまでの150分は一体なんだったんだと言いたいが、過剰なまでに饒舌で飽きさせないタランティーノ節は健在。極私的には、同じ手法であれば「デス・プルーフ」のほうが好みだ。もう一度ストーリーを書いてほしいが、そんなことにはもう興味もないのだろう。あと1本撮ったら劇場映画引退となるらしいが、NETFLIXならどうなるのだろう?


◆スパイダーマン スパイダーヴァース ★★★
 もしかしたら、並行宇宙論のほうがいまは主流なのかもしれない。スパイダーマン映画最高傑作という評価もわからなくもない。映画の定石である、主人公の成長もある(葛藤はあまりない)。音楽も格好いい。意外な仕掛けもある。ただ、物語に並行宇宙を持ち込んでしまうと、結局なんでもありなんじゃないかと思えて仕方がない。すっきりしないままトップ20入りはならなかった。


◆マーウェン ★★★
 ロバート・ゼメキス監督によるミニチュア模型写真家マーク・ホーガンキャンプの実話に基づく映画。批評家も、興行成績も散々だが、イマジネーションのうちにあるマーウェンの世界と、現実世界の境界を曖昧に描くことで、観ているものも現実と幻想を行き来し、あれこれ思いに耽ることができる。あとはマーク・ホーガンキャンプの写真が素晴らしいので、その印象に引き上げられるということはあるのだろう。


◆アス ★★
 これは好きなほうの映画ではない。監督ジョーダン・ピールはこの映画も、前作「ゲット・アウト」も評価されているが、どうやら相性が悪いらしい。二本続けて相性が悪かったので、次はおそらく(少なくとも映画館では)観ないと思う。



◆半世界 ★★★
 どついたるねん、ビリケンなどザ・ナニワ映画を撮る監督阪本順治が脚本も書いた本作。今回はナニワ色は封印し、三重が舞台となっている。といっても、阪本作品をこれまで意識したこともなく、タイトルに惹かれてシンガポールから戻りの飛行機のなかで鑑賞。監督も写真家小石清氏の同名の写真展タイトルに惹かれ、いつか自分の作品にも使おうと思ったという。この映画はややキャラクター配置が歪で、冒頭は除隊自衛隊が主人公かと思わせ、結局は父と子の物語に帰結する。映画を観て、書き起こし小説も読んだ。文字でレビューしたくなる一本だ。



◆ハンターキラー 潜航せよ ★★★
 潜水艦ものの傑作といえば、レッド・オクトーバーを追え、を思い出す。トム・クランシー原作のジャック・ライアンシリーズ第1弾で、あの頃勢いのあったダイ・ハードのジョン・マクティアナン監督作品だ。アメリカに向かうソ連潜水艦の意図は、攻撃か、亡命か。限られた情報からCIA分析官ジャック・ライアンが推理する、というもの。本作も、敵味方かわからぬやりとりの危うさがサスペンスを生んでいる。ロシアでクーデターが起きたらしいという事態に、アメリカがなんとロシア大統領救出に向かう、というもの。荒唐無稽な設定も、情報戦と心理戦のうちに引き込まれた。ラスト近くで大事(おおごと)になるのは映画的な処理か。原作も読んだが、こちらはニューヨークで株取引操作を行うロシア人がいたりして、より複雑なものだった。



◆マイル22 ★★★
 マーク・ウォールバーグ主演。この映画もハンターキラー同様、批評家的にも興行収入的にもあまり評価が高くない。サスペンスフルな展開や、マーク・ウォールバーグ演じる主人公のキャラ設定も悪くないけどな。特殊部隊が護送する守るべく人物がやたらと強く、特殊部隊と一緒に戦うという設定はさすがに馬鹿馬鹿しくて笑えた。ただプロットの回収という点ではやや物足りない。


◆スノーロワイヤル ★★★
 怒れる爺を演じたらNo.1のリーアム〈クワイ・ガン〉ニーソン主演。なんと自作のハリウッド・リメイクを自分で撮るという前代未聞の仕事をしたノルウェー人ハンス・ペテル・モランド監督作品。なんのひねりもない復讐モノだが、死んだ後にたつ死亡フラグがバカバカしくて面白い。


◆ターミネーター:ニューフェイト ★★
 これもダメダメだった映画。スターウォーズのファンはお約束の展開でも画面を観ているだけでも嬉しいのだが、ターミネーターのファンはお約束の展開で満足するとは思えない。ちょっと主人公を女にしてみました、ちょっとリンダ・ハミルトンを復活させてみました、ちょっと年をとったシュワルツェネッガーを出してみました、だけではウケるはずがない。今年最大のがっかり作品かもしれない。評判の悪い前作(ジェネシス)と前前作(サルベーション)のほうが数倍いい。




  
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Posted by 仲村オルタ at 17:59

2019年03月31日

スパイク・リー復活のフローティング・ドリー・ショット

 ブラック・クランズマンを観た。久しぶりのスパイク・リーだ。邦KKKに潜入捜査した黒人とユダヤ人の刑事コンビの話(クランズマンというのはクランのメンバーということ)。コメディにもシリアスにも振れすぎない絶妙なバランスの良作だった。これまで何作もスパイク・リー作品に出てきたデンゼル・ワシントンの息子ジョン・デヴィッド・ワシントンが主演というのも、なんだか感慨深い。
 1989年のDo the Right Thing(当時32歳)で一躍時の人となるスパイク・リーも、もう62歳だ。先日アカデミー賞の授賞式で久しぶりに姿を観たときに、正直言って歳をとったなと思った。「グリーンブック」の作品賞受賞に噛み付いていたことからすると、その徹底した姿勢は健在だ。グリーンブックは確かに白人にとって耳触りの良い美談かもしれないが、常に差別される側からの視点で映画を取り続けたスパイク・リーが許せないのも理解できる。
 ただ、極私的にスパイク・リーのベストをあげろと言われれば、僕は「モ・ベター・ブルース」と「インサイド・マン」の二本を上げる。いずれも、いわゆる差別される黒人という視点を前面に出している作品ではない。しかし随所にスパイク・リーのこだわりと作家性は感じられる。言いたいことを正面に出さず、破滅型ラブストーリーやクリミナルサスペンスでもスパイク・リーを感じさせる。それが良いのだろう。



 今回 Black K Klansmanを観ていて、一番うれしかったのは、スパイク・リーしか取らない登場人物が歩いているのに、なぜか台車に乗って(いると思われるほど)滑らかに平行移動する、いわゆるフローティング・ドリー(あるいはダブルドリー)・ショットのシーンだ。スパイク・リーの映画をすべて観ているわけではないが、すべての映画で必ず使っているはずだ。少なくともDo The Right Thing以降30年あまり続けている。大抵は物語のエモーションがピークに達するときであったり、どうしてここでというところで登場するのだが、本作では映画終盤にそれは訪れる。ネタバレになるので詳細は書けないが、ファンタジーとリアルの境目にあらわれる神のお告げのようなインパクトだった。このシーンを境目に、映画はファンタジーとリアルの狭間でメタ的に昇華する。この実話をもとにした(とされる)ファンタジーが何を言いたい映画なのかをはっきりと提示するのだ。
 スパイク・リーのフローティング・ドリーショットばかり集めたショートフィルム?がネットに公開されていたのでリンクを貼っておく。


  
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Posted by 仲村オルタ at 14:43

2019年03月05日

移動都市~モータルエンジン

 昨年末の反動からか、年が明けてから映画を見るペースが極端に落ちた。いくつか期待以上で、いくつか期待に及ばず。年末にNetFlixでみたアルフォンソ・キュアロンの「Roma」や、ブラッドリー・クーパーの「スター誕生」は極私的にとてもよかったのだが、デミアン・チャゼル新作「ファースト・マン」やロドリゲス&キャメロンの「アリータ」は期待に及ばず。
 そんななか、あまり期待もせず(わざわざ映画館に足を運ぶのだから期待はしているが、また外れるかもなという予感があった)、ピーター・ジャクソン製作・脚本の「移動都市モータル・エンジン」は予想外によかった。ジブリ的、スティーム・パンク版スターウォーズとか言われるのもよくわかるが、おそらくはこの世界設定が極私的にフィットするのだろう。



 都市が都市を捕食する? 最終戦争(10分戦争)のあと、なぜ移動する都市が現れたかよく考えると変な気もするのだが、スティームパンクな世界における、移動都市主義者vs.反移動都市主義者の争いの構図に、娘による母親の復讐譚、主人公ヘスターと彼女に惹かれるトムの恋愛の行方、悪役についてのseek&findeを織り込み、王道な物語展開をみせる。
 なにより、ストーカー〈復活者〉=人造人間シュライクのキャラクターがいい。このキャラクターが活躍しはじめて、物語が3つ巴(正確に言うと三つ巴にはなっていないからや構造になり、俄然面白くなった。シュライクの悲しい過去と、主人公ヘスターへの執着の理由と結末をみて、なんだかよくわからないが泣けてきた。シュライクの神経は鋼でつくられ、かつて人間であった記憶や感情は残っていないはずだが、なぜヘスターに執着したのか、ヘスターをなぜ解放したかを思い、シンパシーを感じたのだろう。シュライクだけの物語でも十分成立する。シュライクのアジトにある不気味な人形やお面などもいい。この映画はシュライクで成功したのだ。
 物語とこの世界観が気に入ったので、原作を読んでみることにした。4作のシリーズになっているようだ。映画の続編は作られるかどうかは怪しい?が、小説版でシュライクがどんな活躍をするかとても楽しみだ。「二つの塔」「竜に奪われた国」のような重厚さはないが、極私的にはツボな一作だった。
  
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Posted by 仲村オルタ at 18:00

2018年12月31日

2018年極私的映画ベスト20 その2(10位から1位)

 昨日に続き、2018年の極私的映画ランキング。今日はトップ10の紹介だ。

特別枠3 アンセイン ~狂気の真実~ Directed by Steven Soderberg
 ソダーバーグの復帰第2作も、昨年と同様に特別枠に。全編をiPhoneカメラで撮影した意欲作で、そう聞くとさすがソダーバーグだなとも思うが、やはり随所でパンがやや不自然に映る。映画のなかでカメラの存在に気づくと、それがよい場合と悪い場合にわかれるが、これは後者だろう。気楽に撮っているのだろうが、本気のソダーバーグもまた見てみたい。


特別枠4 ファントム・スレッド Directed by Paul Thomas Anderson
 PTAことポール・トーマス・アンダーソンの新作は、不思議な恋の物語。「幻の糸」とはダニエル・デイ=ルイスがドレスに縫い込む糸か、あるいは男と女が互いを支配する糸か。この異常な愛のバランスは、多かれ少なかれ、我々の日常に潜む闘いでもある。映画館で見なかったせいか、集中力が続かず、ランクインはしなかった。ダニエル・デイ=ルイスの引退作ということだ。存在の耐えられない軽さから、はや30年。彼もそうだが、自分も年をとったなあ、としみじみ思う。

 
第10位 ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書 ★★★+ Directed by Steven Spielberg
 トム・ハンクスとメリル・ストリープという計算できる名優を使ったことで、50日あまりの驚くほどの早撮りで仕上げたスピルバーグの新作。トランプ政権がはじまったことで、今作るべき、今語るべき映画として、「レディ・プレイヤーワン」のポストプロダクションの合間に作った。完成形をイメージできる経験と才能に、改めてスピルバーグの凄さを思い知った。ウォーターゲート事件の前の物語なので、ウォーターゲート事件のディープスロートを描いたリーアム・ニーソン主演の「ザ・シークレットマン」と、ウォーターゲートそのものを描いた「大統領の陰謀」も続けて見た。アメリカという国は危ういところで民主主義のバランスが取れているのだろうなと思う。もう一本のSF「レディ・プレイヤーワン」はそれほど感情移入できず。エンターテイメントを作るには、いろいろ経験しすぎているということだろうか。


第9位 リメンバー・ミー ★★★+
Directed by Lee Unkrich
 極私的にたぶん子を持つ父親だから涙した映画。家族でDVDにて鑑賞。家族の絆をテーマにしながら、サスペンスやドンデン返しもあるseek&findの物語。「死者に対して生者ができることは、忘れぬこと。思い続けること」ということを、改めて思い起こさせる。メキシコの原色溢れる色彩も素晴らしい。邦題もストレートにテーマを象徴するもので悪くないが、原題のCOCOというシンプルをなタイトルもじわじわきて良い。


第8位 ミッション・インポッシブル フォールアウト ★★★+
Directed by Christopher McQuarrie
 エンターテイメント映画としても、前作に続きかなり楽しめるものだったが、この映画がほぼ脚本なしに撮られたものと聞いて、驚いた。プロットもなく作れば、支離滅裂になるか、不安定になるものだが、エンターテイメント映画としてきちんと成立している。いつもながらのイーサン・ハントの捨て身のアクションもあれば、時限サスペンスもある。見せ場をいくつか配置し、ただそれを繋げたようには思えぬ緊迫感がある。また前作に続き出演したレベッカ・ファーガソンのキャラクターが実にいい。


第7位 ヴァレリアン 千の惑星の救世主 ★★★1/2-
Directed by Luc Bessn
 リュック・ベッソンによるフレンチコミックの映画化。主人公の男女のイメージがしっくりこない、主人公が魅力的でないなど批評家的にも散々で、また興行的にも物足らないのだろうが、リュック・ベッソンのこの物語に対する愛情が強く感じられて、極私的には同様に失敗作と言われる「フィフス・レメント」のような散漫さは感じなかった。何より惑星やキャラクターなどの色彩感覚が素晴らしい。極端な話、美しいミュール星の風景をみるだけでもこの映画の価値はあるように思えるのだ。


第6位 スリー・ビルボード ★★★1/2
Directed by Martin McDonagh
 怒りと許しをテーマにした本作は、脚本と俳優によってもたらされた傑作だ。トップ5に入ってもおかしくないのだが、そうならないのは極私的な趣味趣向の偏向のせいだろう。ウディ・ハレルソン、サム・ロックウェル、そしてフランシス・マクドーマンドのキャラクターが、見事に初出とエンディングで変化している。物語のお手本のようなプロットと、それを昇華させた俳優陣の演技の勝利だろう。


第5位 ボーダーライン ソルジャーデイ
★★★1/2 Directed by Stefano Sollima
 スリー・ビルボード同様に、脚本の勝利というべき一作。前作ボーダーラインは、今をときめく?「複製された男」「ブレードランナー2049」のドゥニ・ヴィルヌーブ監督作品で、改めてみるとかなりの傑作に思えるが、当時は「複製された男」との作品のテイストの差があまりにもありすぎて、うまく評価できなかったように思う。前作と同様の脚本家テイラー・シェリダンの緊迫感に満ちたプロットが秀逸。前作脇役であるにも関わらず圧倒的な存在感を放ったデル・トロを主役に据えたのも成功している。腹に響くほど低音のBGMも前作に続き印象的だ。


第4位 ボヘミアン・ラプソディ ★★★1/2
Directed by Bryan Singer
 フレディー・マーキュリーの生涯への感慨よりも、バンドとしてのクィーンの創造性と多様性の凄さを思い知った映画。映画的にはやや平坦すぎて、史実を変更することでプロットに起伏をつけるのはいかがなものかという気もするが、ラストのライブエイドのWe Are The Championの圧倒的な熱量でそんな思いも吹き飛んだ。ものすごい数の観客のうねりを見て、物心ついた頃から40年もロックを聴き続け、信じ続けて良かったと思い、涙が零れた。この映画を見て以来、車のなかで9歳の息子がクィーンばかりかけて、大声で歌っている。こうしてロックの遺伝子は引き継がれていくのだろう。


第3位 アナイアレーション ★★★1/2+
Directed by Alex Garland
「エクス・マキナ」で監督デビューしたアレックス・ガーランドの新作は、大人の事情?でNetFlix限定公開となり、迷わずお試し加入。地球上に突如として現れた謎の領域〈シマー〉を調査するため潜入する調査隊が遭遇する、美しくも異様な生物が生息する世界。破滅願望を抱えた隊員が直面する危機は、単なる生命の危機ではなく、常識や倫理や実在を揺るがすほどの恐ろしい危機だ。途中出てくるある特徴をもった〈熊〉や、植物化する人間など、トラウマになりそうな奇妙な生き物が多数登場する。人間の記憶の危うさ、物理的な人間を規定する確からしさを揺さぶる、哲学的SF映画の傑作である。


第2位 スターウォーズ 最後のジェダイ ★★★★ Star Wars Episode8 The Last Jedi Directed by 
 ファンの間でも賛否が割れたという本作だが、極私的には大肯定派。王道過ぎて新しい要素がまったくないエピソード7に比べ、ランディ・ジョンソンの冒険心と作り手として意欲が感じられる。特に、皇帝の間でのファイトシーンの転換が素晴らしい。予定調和を破壊すると同時に、エピソード9のネタの先出しをして、JJに挑戦状を叩きつける。この果敢な挑戦を前に、フォースの拡張解釈議論など霧散してしまうのだ。


第1位 シェイプ・オブ・ウォーター The Shape of Water directed by  ★★★★
 アカデミー賞作品賞本命と言われ、全面的に賛成だったが、同時にこれが取ったら凄いことだなと思ったギレルモ・デル・トロの快作。昨年のムーンライトへの反動に思えるのだが、衝撃は「羊たちの沈黙」以来かもしれない。異形への愛に満ちたこの映画は、個人的に胸に刺さるものだ。2018年極私的ナンバー1を友人てふPに捧ぐ。


 ということで、今年も上位はSF映画が独占することとなった。自作は遅々として進まずだが、年末に駆け込みで多くの映画をみたことで、また違うアイデアが浮かんできたりしている。アウトプットしないのは楽だが、辛いものだ。  
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Posted by 仲村オルタ at 10:00

2018年12月30日

2018年極私的映画ベスト20その1(20位から11位)

 今年は年末駆け込みでみたDVDを含め、実に53本もの映画を見た。週1で見ていると思うとかなりの数だ。
 昨年と同様に20本+特別枠4本を選んだ。例によって、このランキングは極私的なものであって、映画の価値を測るものではない。世間では駄作と言われていても、どうしても見逃せない映画もあれば、世間で傑作とされているものを恥ずかしげもなく素晴らしいというものもある。映画は個人の記憶と直結した私的な体験である、と改めて思う。
 劇場公開が2017年12月1日から2018年11月30日までの公開映画より選出している。

特別枠1 デヴィッド・リンチ アート・ライフ
Directed by Jon Nguyen,Olivia Neergaard-Holm,Rick Barnes
 極私的監督買い監督のキングに位置するデヴィッド・リンチの(初期の)創作の秘密に迫るドキュメンタリー。というより、リンチのインタビューにあわせ、関連する映像をパッチワークしたシンプルな構図ながら、つい話に引き込まれて見てしまう映画だった。こうした鬼才が世に見出されるには、才能や必然という要素と同じくらい偶然が重要なのだと改めて思う。一方で、あれだけ実験的でシュールな映像を創っていたリンチが、商業映画を経て、インランド・エンパイアに至った経緯も追認できて、個人的には楽しめた。


特別枠2 岡本太郎の沖縄
Directed by 葛山 喜久
 一方でアートというより人生の(勝手)師匠のひとりである太郎さんのドキュメンタリーについては、太郎さんは素晴らしいのに、ドキュメンタリーとしてはグダグダで抑揚も主張もない映画だったということで、楽しむことができなかった。ドキュメンタリーは個人的なメモではない。今年公開されたもう一本のドキュメンタリー「太陽の塔」は沖縄での公開が間に合わなかった。


第20位 ジュラシック・ワールド 炎の王国 ★★★
Directed by J.A.Bayona
 ジュラシック・ワールド3部作の2作目にあたる本作は、映画としての評価は悪くはない。むしろ前作よりも好意的なレビューも多く見られる。この映画は前半と後半がまったく違う映画と思えるような不思議な構図で、前半は多くのジュラシック・パークファンが望むようなスペクタクルな展開で、後半は一転、恐竜映画ではまさかの屋敷を部隊にした密室サスペンスになる。そして、最後に重すぎる問題を軽やかに?放ち、次作につなげるという、やや身勝手な終わり方で幕を閉じる。その重さゆえに、哲学的に評価することもわからなくはないが、個人的には前作のスペクタクルな展開のほうが好みだ。


第19位 マザー! ★★★
Directed by Darren Aronofsky
 ジェニファー・ローレンス主演、ダーレン・アロノフスキー監督ながら、日本未公開DVDのみリリースとなった本作。宗教的な寓話として見るか、不条理スリラーとして見るか、いずれのスタイルをとるかだろうが、いずれのスタイルについても我々にはこの映画の真の価値を理解するだけの経験と知識がないのだろうと思う。映画はまったく異なるのだが、韓国映画「コクソン」と同じ種類の鑑賞後感を残す。胃のなかに重い石を放り込まれたような気分だ。が、テイストは嫌いではない。


第18位 アベンジャーズ インフィニティ・ウォー ★★★
Directed by Russo Brothers
 Marvelヒーロー総動員のアベンジャーズ3作目は、Marvelのなかでも格段に面白かったウィンター・ソルジャー、シビル・ウォーの監督ルッソ兄弟を抜擢して、総仕上げ感満載の映画となった。これまでのシリーズのなかでは、最も宙ぶらり感がある。ただ、次回作エンドゲームでラストに提示された最大のピンチを解決しなければ、ほかの映画シリーズもまた再開しないことを考えると、次作は自ずと予定調和となることが想定されるが、おそらくはそれを所与として、映画的カタルシスを創るのだろう。次作もルッソ監督なので期待できる。


第17位 ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー ★★★
Directed by Ron Howard,Phil Lord&Chris Miller
 最後のジェダイのあと、わずか半年で公開された本作は、世間のスターウォーズ疲れや、製作途中での監督交代などいろいろな要因もあって、エンターテイメントとしてはまぁまぁだが、スター・ウォーズとしてはどうなんだろうと疑問のわく一作だった。チューバッカとの出会い、親であり師匠であるベケット=ウッディ・ハレルソンやファムファタールであるキーラとの駆け引き、ミレニアム・ファルコン号をめぐるランドとハンの関係、そして最大の見せ場である「あのキャラクター」の復活など魅力は多いのだが、映画としてはスター・ウォーズ的な横綱勝負をしているわけではなく、詰め込み感と余裕のなさが感じられる。マジックがなかったことが最大の敗因か。


第16位 ワンダー 君は太陽 ★★★
Directed by Stephen Chbosky
 病気のために顔が変形してしまった少年オギーの成長と、周囲の変化をめぐる物語。オギーを包み込むような母親、父親、姉の深い愛情が胸を打つ。批判的なレビューが言うところの押しつけ感はあまり感じなかったが、淡々としたタッチゆえに、押し迫る感じも少ない。登場人物で章立てするスタイルは好感が持てた。「心はこれからどこに向かうかを示す地図で、顔は今まで私たちがどんな道を歩んでくれたかを示している地図」という母親の台詞など、名台詞もいくつかあった。


第15位 プーと大人になった僕 ★★★
Directed by Marc Forster
(つまらない)大人になったクリストファー・ロビンとくまのプーさんの再会の物語。こちらも、プーの台詞が胸を打つ。
プー「今日ってなんの日?」
ロビン「今日は“今日”だよ。」
プー「“今日”か…僕の大好きな日だ。昨日、今日がまだ明日だったとき、今日は手が届かないものだと思ってたんだ」
プーの素直でひたむきな姿がただ胸を打つ大人の寓話だ。


第14位 ハナレイ・ベイ ★★★
Directed by 松永大司
 村上春樹の短編集「東京奇譚集」に含まれる短編の映画化だ。喪失と再生の物語だ。村上春樹の小説は、行間でイメージを想起させるもので、小説の時点ですでに映像的にも完成されているため、映画化はうまくいったものが少ない(かあるいはない)。本作はもとが短編ゆえに、うまくイメージを膨らませ、比較的成功しているのだろうと思う。主演の吉田羊がいい。日本映画では、ほかに話題となった「カメラを止めるな」があるが、個人的には創作意欲をそそられるまでには至らなかった。


第13位 search/サーチ ★★★
Directed by Aneesh Chaganty
 インド系アメリカ人チャガンティの長編デビュー作。サスペンス映画なのだが、すべてのシーンはPCやスマホやテレビの画面のなかだけで進行する。かといって、アイデア勝負の作り手エゴ剥き出しの映画にはなっていない。きちんとしたプロットのあるミステリーとなっている。映画のテンションもエンディングまで維持され、作り手のアイデアと意欲の勝利となっている。


第12位 サバービコン ★★★
Directed by George Clooney
 コーエン兄弟脚本、ジョージ・クルーニー監督の本作は、テイストとしてはいつものオフビート感満載で悪くないのだが、映画としては、人種差別問題なのか、ミステリーなのか、社会風刺なのか何を言いたいかわからなくなっており、興行的にも大敗した。コーエン兄弟が自ら監督したとしたら、結果は変わっていただろうか。


第11位 アンダー・ザ・シルバーレイク ★★★
Directed by David Robert Mitchell
「イット・フォローズ」に次ぐデヴィッド・ロバート・ミッチェルの新作。テイストは悪くないし、大いに語りたい映画ではあるものの、散りばめられた謎と暗示と答えが全体としてグリップされていないため、散漫な印象を受ける。この映画を見て感じたのは、やはりデビッド・リンチの凄さだ。リニアな映画の世界に絵画的なノンリニアな世界を持ち込むのは、それほど容易なことではない。


 トップ10は明日に。  
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Posted by 仲村オルタ at 10:00

2018年11月11日

BOHEMIAN Rhapsody

 映画「ボヘミアン・ラプソディー」を見た。監督はブライアン・シンガー。好きな監督のひとりだが、この映画の途中で解任されたという(だが、クレジットはブライアン・シンガーだ)。映画はどこか大味な感じがしたが、やはりラストのあの曲では涙した。考えてみれば、映画を見て泣いたのは今年は初めてかもしれない。大味な感じがしたのは、この映画におそらくは葛藤や苦悩がないからだろう。フレディー・マーキュリーの凄さよりも、クイーンというバンドの革新性や創造性を再認識した。
 家に帰って、劇中で再現された本物のクイーンのライブエイド映像を見る。そして、また涙する。
 
 映画は美浜セブンプレックスで見た。劇場限定(美浜のそれもひとつのスクリーンのみ)、期間限定の凄音上映だという。音楽映画ゆえに、爆音で見たい。個人的にはIMAXを断念しても、音にはこだわりたい。それくらい映画にとって音は重要だと思う。
 美浜の凄音上映は、低音は悪くなかったが、高音が同様に出力されていたのか、時折耳にキンキンと響き、あまりチューニングされていないような気がした。そう思うと、立川の爆音上映は良かった。マッドマックスはただ音が大きいだけでなく、適切に響いていたように思う。
 
 とはいえ、これが常設されたなら、美浜で映画を見る機会は確かに増えるだろう。ぜひ常設してほしい。
  
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Posted by 仲村オルタ at 23:24

2018年10月07日

Prince専門DJ 仲村オルタ

 35年あまり殿下のどちらかというと熱烈なファンで、ふと思い出したように12インチなどの音源を集めまくった時期もあり、おそらくは(確かではないが)沖縄で最もプリンス関連の音源を持っているものの責務として、プリンス専門DJ仲村オルタとして初DJに挑んだ。3連休中日の気怠い日曜日だった。



 プロのDJの人には申し訳ないような未熟さで、ミキサー操作の余裕もなく、オーディエンスに楽しんでもらうような余裕はなかったかもしれない。与えられた1時間の間にかけた音楽の質の高さだけが救いだ。いわゆる天才時代を中心に、本当はextend mixを楽しんでもらうほうがよいのだが、持ち時間の関係でオリジナルで代替した数曲をかけた。
 やってみるとなかなか楽しい。けれど、聞き慣れない人がゴリゴリしたプリンスを聞いても楽しくないだろうから、自分の好きなプリンスを持ち寄る大プリンス大会などがあれば、またやってみたい。


  
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Posted by 仲村オルタ at 22:30

2018年09月19日

ある外交官の死

この記事はこちらへ引っ越しました
  
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Posted by 仲村オルタ at 17:56
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プロフィール
仲村オルタ
仲村オルタ
職業:書き物一切。
職人のごとくただ書くのみ(としたい)。
公式サイト alt99.net
台湾より沖縄復帰後1年で関西へ。まさかの東京暮らしを経て、流れ流れて今は沖縄暮らし。
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