2018年12月30日

2018年極私的映画ベスト20その1(20位から11位)

 今年は年末駆け込みでみたDVDを含め、実に53本もの映画を見た。週1で見ていると思うとかなりの数だ。
 昨年と同様に20本+特別枠4本を選んだ。例によって、このランキングは極私的なものであって、映画の価値を測るものではない。世間では駄作と言われていても、どうしても見逃せない映画もあれば、世間で傑作とされているものを恥ずかしげもなく素晴らしいというものもある。映画は個人の記憶と直結した私的な体験である、と改めて思う。
 劇場公開が2017年12月1日から2018年11月30日までの公開映画より選出している。

特別枠1 デヴィッド・リンチ アート・ライフ
Directed by Jon Nguyen,Olivia Neergaard-Holm,Rick Barnes
 極私的監督買い監督のキングに位置するデヴィッド・リンチの(初期の)創作の秘密に迫るドキュメンタリー。というより、リンチのインタビューにあわせ、関連する映像をパッチワークしたシンプルな構図ながら、つい話に引き込まれて見てしまう映画だった。こうした鬼才が世に見出されるには、才能や必然という要素と同じくらい偶然が重要なのだと改めて思う。一方で、あれだけ実験的でシュールな映像を創っていたリンチが、商業映画を経て、インランド・エンパイアに至った経緯も追認できて、個人的には楽しめた。
2018年極私的映画ベスト20その1(20位から11位)

特別枠2 岡本太郎の沖縄
Directed by 葛山 喜久
 一方でアートというより人生の(勝手)師匠のひとりである太郎さんのドキュメンタリーについては、太郎さんは素晴らしいのに、ドキュメンタリーとしてはグダグダで抑揚も主張もない映画だったということで、楽しむことができなかった。ドキュメンタリーは個人的なメモではない。今年公開されたもう一本のドキュメンタリー「太陽の塔」は沖縄での公開が間に合わなかった。
2018年極私的映画ベスト20その1(20位から11位)

第20位 ジュラシック・ワールド 炎の王国 ★★★
Directed by J.A.Bayona
 ジュラシック・ワールド3部作の2作目にあたる本作は、映画としての評価は悪くはない。むしろ前作よりも好意的なレビューも多く見られる。この映画は前半と後半がまったく違う映画と思えるような不思議な構図で、前半は多くのジュラシック・パークファンが望むようなスペクタクルな展開で、後半は一転、恐竜映画ではまさかの屋敷を部隊にした密室サスペンスになる。そして、最後に重すぎる問題を軽やかに?放ち、次作につなげるという、やや身勝手な終わり方で幕を閉じる。その重さゆえに、哲学的に評価することもわからなくはないが、個人的には前作のスペクタクルな展開のほうが好みだ。
2018年極私的映画ベスト20その1(20位から11位)

第19位 マザー! ★★★
Directed by Darren Aronofsky
 ジェニファー・ローレンス主演、ダーレン・アロノフスキー監督ながら、日本未公開DVDのみリリースとなった本作。宗教的な寓話として見るか、不条理スリラーとして見るか、いずれのスタイルをとるかだろうが、いずれのスタイルについても我々にはこの映画の真の価値を理解するだけの経験と知識がないのだろうと思う。映画はまったく異なるのだが、韓国映画「コクソン」と同じ種類の鑑賞後感を残す。胃のなかに重い石を放り込まれたような気分だ。が、テイストは嫌いではない。
2018年極私的映画ベスト20その1(20位から11位)

第18位 アベンジャーズ インフィニティ・ウォー ★★★
Directed by Russo Brothers
 Marvelヒーロー総動員のアベンジャーズ3作目は、Marvelのなかでも格段に面白かったウィンター・ソルジャー、シビル・ウォーの監督ルッソ兄弟を抜擢して、総仕上げ感満載の映画となった。これまでのシリーズのなかでは、最も宙ぶらり感がある。ただ、次回作エンドゲームでラストに提示された最大のピンチを解決しなければ、ほかの映画シリーズもまた再開しないことを考えると、次作は自ずと予定調和となることが想定されるが、おそらくはそれを所与として、映画的カタルシスを創るのだろう。次作もルッソ監督なので期待できる。
2018年極私的映画ベスト20その1(20位から11位)

第17位 ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー ★★★
Directed by Ron Howard,Phil Lord&Chris Miller
 最後のジェダイのあと、わずか半年で公開された本作は、世間のスターウォーズ疲れや、製作途中での監督交代などいろいろな要因もあって、エンターテイメントとしてはまぁまぁだが、スター・ウォーズとしてはどうなんだろうと疑問のわく一作だった。チューバッカとの出会い、親であり師匠であるベケット=ウッディ・ハレルソンやファムファタールであるキーラとの駆け引き、ミレニアム・ファルコン号をめぐるランドとハンの関係、そして最大の見せ場である「あのキャラクター」の復活など魅力は多いのだが、映画としてはスター・ウォーズ的な横綱勝負をしているわけではなく、詰め込み感と余裕のなさが感じられる。マジックがなかったことが最大の敗因か。
2018年極私的映画ベスト20その1(20位から11位)

第16位 ワンダー 君は太陽 ★★★
Directed by Stephen Chbosky
 病気のために顔が変形してしまった少年オギーの成長と、周囲の変化をめぐる物語。オギーを包み込むような母親、父親、姉の深い愛情が胸を打つ。批判的なレビューが言うところの押しつけ感はあまり感じなかったが、淡々としたタッチゆえに、押し迫る感じも少ない。登場人物で章立てするスタイルは好感が持てた。「心はこれからどこに向かうかを示す地図で、顔は今まで私たちがどんな道を歩んでくれたかを示している地図」という母親の台詞など、名台詞もいくつかあった。
2018年極私的映画ベスト20その1(20位から11位)

第15位 プーと大人になった僕 ★★★
Directed by Marc Forster
(つまらない)大人になったクリストファー・ロビンとくまのプーさんの再会の物語。こちらも、プーの台詞が胸を打つ。
プー「今日ってなんの日?」
ロビン「今日は“今日”だよ。」
プー「“今日”か…僕の大好きな日だ。昨日、今日がまだ明日だったとき、今日は手が届かないものだと思ってたんだ」
プーの素直でひたむきな姿がただ胸を打つ大人の寓話だ。
2018年極私的映画ベスト20その1(20位から11位)

第14位 ハナレイ・ベイ ★★★
Directed by 松永大司
 村上春樹の短編集「東京奇譚集」に含まれる短編の映画化だ。喪失と再生の物語だ。村上春樹の小説は、行間でイメージを想起させるもので、小説の時点ですでに映像的にも完成されているため、映画化はうまくいったものが少ない(かあるいはない)。本作はもとが短編ゆえに、うまくイメージを膨らませ、比較的成功しているのだろうと思う。主演の吉田羊がいい。日本映画では、ほかに話題となった「カメラを止めるな」があるが、個人的には創作意欲をそそられるまでには至らなかった。
2018年極私的映画ベスト20その1(20位から11位)

第13位 search/サーチ ★★★
Directed by Aneesh Chaganty
 インド系アメリカ人チャガンティの長編デビュー作。サスペンス映画なのだが、すべてのシーンはPCやスマホやテレビの画面のなかだけで進行する。かといって、アイデア勝負の作り手エゴ剥き出しの映画にはなっていない。きちんとしたプロットのあるミステリーとなっている。映画のテンションもエンディングまで維持され、作り手のアイデアと意欲の勝利となっている。
2018年極私的映画ベスト20その1(20位から11位)

第12位 サバービコン ★★★
Directed by George Clooney
 コーエン兄弟脚本、ジョージ・クルーニー監督の本作は、テイストとしてはいつものオフビート感満載で悪くないのだが、映画としては、人種差別問題なのか、ミステリーなのか、社会風刺なのか何を言いたいかわからなくなっており、興行的にも大敗した。コーエン兄弟が自ら監督したとしたら、結果は変わっていただろうか。
2018年極私的映画ベスト20その1(20位から11位)

第11位 アンダー・ザ・シルバーレイク ★★★
Directed by David Robert Mitchell
「イット・フォローズ」に次ぐデヴィッド・ロバート・ミッチェルの新作。テイストは悪くないし、大いに語りたい映画ではあるものの、散りばめられた謎と暗示と答えが全体としてグリップされていないため、散漫な印象を受ける。この映画を見て感じたのは、やはりデビッド・リンチの凄さだ。リニアな映画の世界に絵画的なノンリニアな世界を持ち込むのは、それほど容易なことではない。
2018年極私的映画ベスト20その1(20位から11位)

 トップ10は明日に。

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Posted by 仲村オルタ at 10:00
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台湾より沖縄復帰後1年で関西へ。まさかの東京暮らしを経て、流れ流れて今は沖縄暮らし。
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