2016年04月23日

プリンスと生きた時代

 今年二度目の衝撃の訃報。プリンスが死んだ。朝のNHKニュースで知った。しばらく呆然とニュースを眺めた。全く実感がわかなかった。二日たったが、いまだに実感がわかない。
 プリンスを初めて聴いたのは、1982年にリリースされたアルバム"1999"からのシングルLittle red corvetteだった。ファンク・バラッドであり、ロック心をくすぐるギターあり、耳に残るリフあり。引き込まれるようにアルバムを聴いた。ロックでも、ブラック・ミュージックでもない新しい音楽体験。まわりの友人に話しても、気持ち悪いと言われるだけだったが、当時貸レコード屋でそれ以前のレコードも借りた。


Litlle Red Corvette

 それ以後、88年のLovesexyまでほぼ1年に1枚のペースで信じられぬほどのクオリティのアルバムをリリースする。いわゆる天才時代だ。なかでもPurple Rainの大ヒットのあと、翌年にリリースされにたAround the world in a dayのリリースが最も衝撃的だった。1度聴いても、まったく理解できない。心地よさはない。それでもすぐにまた聴きたくなる。そして、何度も繰り返す聴く。これはロックなのか、サイケなのか、ファンクなのか。自分の奥底に隠された密室のなかで、ひとには言えない密かな喜びをかみしめる。それはまったく新しい音楽体験だった。

過去記事 プリンスの天才時代

 天才時代のあと、批評家にはあれこれ言われながらも、そこそこヒットするアルバムをコンスタントにリリースし(いまはすべて購入している)、昨年にもHITnRUN Phase One&Twnoの2枚のアルバムをリリースしている。最近のアルバムは正直なところ、天才時代のような刺激はない。30年前にKissをリリースした衝撃はいまはない。それでも、新しいアルバムを出せば必ず聴いていたし、そのたびに寂しい気持ち、懐かしい気持ちをかきたてられた。
 一番さびしいのは、もうライブが見られないことだ。
 Paredeアルバムをリリースしたあと、86年9月に初来日したときの大阪城ホールのライブは、おそらくはこれまで私が体験した至高のライブ体験だった。1曲めのAround the world in a dayの中近東風イントロが満員の会場に流れるだけで、いまでもはっきり覚えているが、全身鳥肌、卒倒しそうなほどの感動があった。

プリンスと生きた時代

 5年ほどまえにラスベガスでそっくりさんのショーを見た。purple rainで手をフリなが、国籍や民族は違えども、同じ時代に生きた「同時代感」を強く感じた。アルバムごとに、ささやかな私の人生の一コマ、一コマが蘇る。おそらく、かつての私に関わったひとのなかには、プリンスの訃報をきいて私のことを思い出した人もいるだろう。私は確かにこの時代を生きた。おそらくは私と同様に、極私的で至高の音楽体験をした世界中の同士たちも、こんな「同時代感」を感じながら、早すぎる死を嘆いているのだろう。
 まだ信じられないが、二日間プリンスばかり聴き続けている。私は、多感だった十代の頃から人生折り返しを過ぎた今このときまで、プリンスとともに生きた。なにか特別なことをしたわけではないが、それでもこの時代を誇りに思う。

 If u set your mind free,baby,maybe u'd understand.(Starfish & Coffee)
The sun will shine upon u oneday if u're always walking on your way(walk don't walk)
It's plain to see.You're the reason that God made a girl(The most beautiful girl in the world)

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Purple Reign(2010.11.20)

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Posted by 仲村オルタ at 23:19
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