2009年08月22日

惡棍特工

 タランティーノの新作「イングロリアス・バスターズ」を早速見た。アメリカと同時公開、日本公開も秋ということなので、あまり情報がない。反ナチス映画だという。結果は、タランティーノにしては珍しいほどストレートなメッセージを持った映画だった。以下ネタばれなし

惡棍特工

 内容は簡単に言うと、ナチスに家族を殺された少女の復讐の物語と、ナチス幹部暗殺を目論むブラピ率いる米軍特殊部隊の物語が平行して描かれるもの。1976年のイタリア映画「地獄のバスターズ」(筆者未見)のリメイクといわれるが、あらすじをみるとリメイクではなく、インスパイアされた映画といえる。
 映画が終わって強烈な印象を持ったのは、SSハンス・ランダ役のクリストフ・ヴァルツという役者だ。役得もあるのだろうが、抑制されたユーモアと恐怖のセンスは、完全にブラピを喰っている。あとで調べてみると、今年のカンヌでもこの演技で男優賞を獲得しているという。タランティーノも「彼がいてくれたから映画が救われた」というようなことを言っているようだが、確かにこの役が平凡なものだったとしたら、恐怖とユーモアを等価に描くことでシリアスと滑稽さをバランス良く表現する本作の意図も曖昧なものとなってしまうだろう。
 ラスト近くで「キノ作戦」と呼ばれる映画館での幹部暗殺作戦が描かれる。このシーンをつくりたいためにタランティーノはこの映画をつくったのだろうと思えるほどの意気込みを感じる、緊張感と痛快さのあふれる美しいクライマックスだった。タランティーノらしく偶然律がこの場面を支配しているのもいい。映画のオチも実に小気味いい。このシニカルさはこれまでのタランティーノ映画では感じられないものだったが、けっして新境地というわけではないだろう。おそらく、また次はお馬鹿映画への映画愛に溢れる映画を作るはずだ。

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Posted by 仲村オルタ at 14:00
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