2008年02月16日

君が気高い孤独なら

 日本に戻ったタイミングでうまい具合にチャンスが出来たので、(勝手)師匠佐野元春氏のライブに出掛けた。もう5年ぶりくらいになろうか。

 80年代前半から数えて、おそらく100本近く佐野氏のステージを見ているだろう。ところが、the sunツアーのあとくらいに、沖縄へ移住してしまったので、見る機会もなくなってしまった。残念だという気持ちはあまりなかった。最近の佐野氏のライヴは、近年発表するアルバムの素晴らしさと対称的に、同窓会ムードとセンチメンタリズムに満ちた、一言で言えば苦しいステージばかりだったからだ。

君が気高い孤独なら

 四半世紀もの間、僕が勝手に佐野氏を師事してきたのは、危うさのなかで新しい何かを生み出すポジティビティにあった。[the barn][the sun]そして[coyote]の最近のアルバムにもその精神は溢れている。しかし、ライヴになるとどうしても、ハートランド懐古大会になってしまう。hoboking bandも上手いのはよくわかるが、演奏にグルーヴがあまり感じられない。

 ということで、物理的にライブに行けなくなっても、まあそれは仕方ないかと思ってはいたのだが、今回はチャンスということで、台湾から日本へ戻ったわずかな日程のなかで、某地方都市へ駆けつけた。
 coyoteアルバムは素晴らしかった。coyoteアルバムの曲がどのように披露されるのか。僕はそればかりを楽しみにしていた。

君が気高い孤独なら

 ところが、結果は僕にとってはあまり楽しいものではなかった。落胆と失望。その日のビジネスホテルへの道のりをとぼとぼと帰る。
 セットリストのなかで、新しいアルバムから演奏されたのは、わずかに3曲だ。coyoteツアーではなく、sweet soul blue beat ツアーだし、忙しいhobokingバンドの日程上そんなに音あわせをする間もない・・落ち着いて考えれば、こうなる要素はいくつもある。でも、coyoteアルバムでhobokingバンドと競演しなかったように、ほかの選択肢もあったはずだ。もっとスリリングで、危ういライブもみせられたはずだ。

 個人的には残念なライブだが、ネット上を見ると賞賛が多いのにも驚く。もはや、誰もが佐野元春を過去の大御所としてしか考えていないのだろうか? 懐かしい・・青春が蘇る・・そんなことは僕は求めない。師匠には、ただ前に進み続けてほしいのだ。止まり続けてほしくないのだ。

 もしも君が気高い孤独なら、その魂を空に広げて
 もう一度 どうしようもないこの世界を、強く解き放ってやれ(「君が気高い孤独なら」)

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Posted by 仲村オルタ at 23:28
この記事へのコメント
某日某所にてcoyote tourをみた。素晴らしいライブだった。コヨーテアルバムの収録順に演奏されたコヨーテは、このライヴをもって完成したような気がした。「アルバム発売後早くこのメンバーでやりたかったのだけど、2年も経ってしまった」というようなことをmotoは言っていた。前回のツアーは大人の事情で必要だったのだろう。記憶にある限りはじめて[someday]をやらないツアーだったが、それが素晴らしいと思った。アンコールの80年代大会の演奏も若々しさと意欲に溢れていた。somedayで総括してほしくないと思ったが、そうならなくて本当に良かった。来年は30周年。なにか派手なことをやるという。回顧大会にだけはしてほしくない。もうたぶん見に行くことはできないだろうけれど。
Posted by 仲村オルタ仲村オルタ at 2009年08月02日 17:50
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台湾より沖縄復帰後1年で関西へ。まさかの東京暮らしを経て、流れ流れて今は沖縄暮らし。
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