2006年05月26日
【インド旅行記09】タフに生きろ reprise
長々と続けてきた旅行記も、これで一区切りをつけようと思う。
なんだかんだと言いながら、結構楽しんでいるやないかと思われる方も多いだろうが、実際に結構楽しんでいるのも事実である。旅の途中では腹もたつことも多かったけれど、こうして振り返ってみると、別にたいしたことやないやないか、という気持ちのほうが強い。取材費でも貰わない限り二度と行くかと思っていたけれど、行きたいとは思わないにしても、行ってもいいなくらいまでには気持ちも変化している。
インドで死を身近に感じたのは、旅行社で脅されたときでもなく、ヴァラナシで危険に飛び込んだときでもなく、アーグラーからデリーに帰る電車(タージ・エクスプレス)でのことだった。しばらく快適に乗っていたのだけれど、途中から巡礼の一団が大勢乗り込んできて、席のあるとこ、ないとこに溢れ始めた。巡礼団ゆえに大きな荷物が列車のあちこちに並べられる。座席指定券を持っている様子もない。指定席のはずがなぜか満員の2等車内で、もしこのなかにテロリストがいたら、俺は間違いなく死ぬだろうな、と思った。インドの闇を列車は走りすぎていく。通路に人が溢れても、根性のある車内売り子は間の抜けた声で「チャーイ、チャーイ」と声をあげながら過ぎてゆく。その混沌はまさにインドそのものだ。
空港行きその後について。
空港行きのオートリキシャのおやじに何度も茶葉屋を勧められたけれど、断固として時間がないと言い続けた。諦めたおやじは、帰りに客が乗せられないので200と言ったけど250だ、と言い出す。もうなんでもいいから空港に連れてってくれよ、という思いで適当にうなずく。途中で給油所に立ち寄った以外は、おやじはきちんと空港まで運んでくれた。ほっとした勢いもあり、チップ含めて300渡してしまった。少し甘かったかもしれん。
当然のごとく、JALカウンターで難なくチェックインできた。身体から力が抜ける気がした。これでようやく沖縄に帰ることができる、と思った。
生きるために人を騙してよいかといえば、もちろんそれは許されるべきことではない。でも、必死に生きているのは事実である。緊張感を持って、毎日を無駄にすることなく、しなやかに、タフに生きること。それを僕はこのユルい沖縄で忘れてしまっていたような気がする。僕を騙そうとしたインド人の顔がひとりひとり思い浮かぶ。感謝することはないけれど、まあオマエらもせいぜい生きなよ、とは思う。
そもそも僕のような1week travelerは、1week travelerらしく、きちんとアレンジされた旅程にのっかれば、こんなことにも巻き込まれない。それに僕の中途半端な英語力がもう少しきちんとしていたなら、事前にいろいろと確認できたかもしれない。この中途半端さが、トラブルや詐欺まがいを招きこんだ一因であるのは間違いない。
女優中谷美紀は、「嫌われ松子の一生」という渾身の仕事を終えた後、半年あまりのあいだに四度インドに出かけている。そのあいだにパスポートを盗まれたり、いろいろなトラブルに巻き込まれたようだが、それでも集中的にインドに通い続けた。その気持ちはわからないこともない。
僕にとっても、このインドの旅は結果的には節目の旅となった。僕の人生に訪れた突然の巡礼団のようなものなのだろう。この旅を経て、手にしたものは、誰かのまやかしのノイズなどでかき消されるものじゃない。ずっと大事にしたい。
タフに生きろ。何度も、自分にそう言い聞かせる。
今回の旅を経てすっかり汚くボロボロになったサンダル(このあと捨てた)
なんだかんだと言いながら、結構楽しんでいるやないかと思われる方も多いだろうが、実際に結構楽しんでいるのも事実である。旅の途中では腹もたつことも多かったけれど、こうして振り返ってみると、別にたいしたことやないやないか、という気持ちのほうが強い。取材費でも貰わない限り二度と行くかと思っていたけれど、行きたいとは思わないにしても、行ってもいいなくらいまでには気持ちも変化している。
インドで死を身近に感じたのは、旅行社で脅されたときでもなく、ヴァラナシで危険に飛び込んだときでもなく、アーグラーからデリーに帰る電車(タージ・エクスプレス)でのことだった。しばらく快適に乗っていたのだけれど、途中から巡礼の一団が大勢乗り込んできて、席のあるとこ、ないとこに溢れ始めた。巡礼団ゆえに大きな荷物が列車のあちこちに並べられる。座席指定券を持っている様子もない。指定席のはずがなぜか満員の2等車内で、もしこのなかにテロリストがいたら、俺は間違いなく死ぬだろうな、と思った。インドの闇を列車は走りすぎていく。通路に人が溢れても、根性のある車内売り子は間の抜けた声で「チャーイ、チャーイ」と声をあげながら過ぎてゆく。その混沌はまさにインドそのものだ。
空港行きその後について。
空港行きのオートリキシャのおやじに何度も茶葉屋を勧められたけれど、断固として時間がないと言い続けた。諦めたおやじは、帰りに客が乗せられないので200と言ったけど250だ、と言い出す。もうなんでもいいから空港に連れてってくれよ、という思いで適当にうなずく。途中で給油所に立ち寄った以外は、おやじはきちんと空港まで運んでくれた。ほっとした勢いもあり、チップ含めて300渡してしまった。少し甘かったかもしれん。
当然のごとく、JALカウンターで難なくチェックインできた。身体から力が抜ける気がした。これでようやく沖縄に帰ることができる、と思った。
生きるために人を騙してよいかといえば、もちろんそれは許されるべきことではない。でも、必死に生きているのは事実である。緊張感を持って、毎日を無駄にすることなく、しなやかに、タフに生きること。それを僕はこのユルい沖縄で忘れてしまっていたような気がする。僕を騙そうとしたインド人の顔がひとりひとり思い浮かぶ。感謝することはないけれど、まあオマエらもせいぜい生きなよ、とは思う。
そもそも僕のような1week travelerは、1week travelerらしく、きちんとアレンジされた旅程にのっかれば、こんなことにも巻き込まれない。それに僕の中途半端な英語力がもう少しきちんとしていたなら、事前にいろいろと確認できたかもしれない。この中途半端さが、トラブルや詐欺まがいを招きこんだ一因であるのは間違いない。
女優中谷美紀は、「嫌われ松子の一生」という渾身の仕事を終えた後、半年あまりのあいだに四度インドに出かけている。そのあいだにパスポートを盗まれたり、いろいろなトラブルに巻き込まれたようだが、それでも集中的にインドに通い続けた。その気持ちはわからないこともない。
僕にとっても、このインドの旅は結果的には節目の旅となった。僕の人生に訪れた突然の巡礼団のようなものなのだろう。この旅を経て、手にしたものは、誰かのまやかしのノイズなどでかき消されるものじゃない。ずっと大事にしたい。
タフに生きろ。何度も、自分にそう言い聞かせる。
今回の旅を経てすっかり汚くボロボロになったサンダル(このあと捨てた)
Posted by 仲村オルタ at 23:28
この記事へのコメント
インド旅行記、興味深く一気に全部拝読しました。この地を訪れる日が私に訪れるかどうかわかりませんが、今は「行ってもいいかな」くらいになりました。またお邪魔します。
Posted by mie at 2009年04月03日 12:00
>mieさん
ありがとうございます。僕もヴェトナムのようにぜひお勧めですとはいえませんが、チャンスがあれば行ってみてください、とは言えます。あるいは、縁があればおそらく行くはずでしょう、とか・・いろんな意味で懐の深い国です。
ありがとうございます。僕もヴェトナムのようにぜひお勧めですとはいえませんが、チャンスがあれば行ってみてください、とは言えます。あるいは、縁があればおそらく行くはずでしょう、とか・・いろんな意味で懐の深い国です。
Posted by 仲村オルタ at 2009年04月05日 14:15