2016年12月31日

2016年極私的映画ベスト10

 毎年恒例の極めて私的な尺度で選ぶ映画ベスト10。去年より少ないものの、今年も合計で35本あまりの映画を映画館やDVDで見た。映画をみて、どうのこうのと好き勝手なことを言ったり、まだ見ぬ新しい自作について思いを巡らしたりすることは、とても幸せなことなのだと改めて思う。例年どおり、前年2015年12月から今年2016年11月に公開された映画を対象とする。

特別枠 サイン・オブ・ザ・タイムズ Sign 'O' the Times directed by PRINCE
2016年極私的映画ベスト10
 2014年にリバイバル公開され、特別枠にランクインしたこの映画だが、今年は突然亡くなったため、二度も映画館で見た。そのうち一度は、立川にて爆音(正確には極音らしい、たぶん爆音にミックスするには音源の仕様が不足しているのだろう)で見た。素晴らしいライブフィルムだ。私の持っているCDは出力レベルが低く、ほかのプリンスの曲と合わせて聴くとまったく満足できないので、出力を上げてmp3にもした。ブルーレイも手に入れた。プリンスをライブで見ることができなくなった今も、ときどき思い出したように個人的にはプリンスブームがやってきて、プリンスばかり聴く日々が続いたりする。プリンスと同時代を生きることが出来て、本当に良かった。
RIP prince,may u live 2 see the dawn.

第10位 シビル・ウォー キャプテン・アメリカ Captain America: Civil War directed by Russo brothers ★★★
2016年極私的映画ベスト10
 DC派の私だが、上海行きの飛行機内で見たにもかかわらず、この映画は結構楽しめた(アントマンやスパイダーマンが出て来るあたりはやり過ぎ感もあるのだが)。キャプテン・アメリカは1本目は凡庸だが、2作目ウィンター・ソルジャーより、おそらくはアベンジャーズより面白くなる。本作は2作目と同じ監督で、この功績が認められたのか、次回のアベンジャーズの監督にも起用されている。Batman v Supermanは同じ"内戦"ものになるのだが、たぶん監督ザック・スナイダーとの相性が悪いのだろう、バットマン映画の興奮もなく終わった。

第9位 我が背きし者 Our kid of a Traitor directed by Susanna White ★★★
2016年極私的映画ベスト10
 ジョン・ル・カレ原作のスパイ・サスペンス。いわゆる巻き込まれ型サスペンスの定石を踏みながら、リアリティあるスパイ間の駆け引きをも描く。この映画も厦門行きの飛行機のなかで見た。飛行機のなかというのは、画面は小さいが物語に集中できてよい。読みにくいル・カレの原作を今読んでいる。

第8位 スーサイド・スクワッド suicide squad directed by David Ayer ★★★
2016年極私的映画ベスト10
 DCからは悪役オールスターズが地球を救うこの映画がランクイン。世間の評判は分かれているようだが、個人的にはザック・スナイダーの映画よりよっぽどいい。画面の派手さというのは、CGでなんとでもなる今、まったく興奮しない。この映画では、ジョーカーのキャラクター配置がとてもよかった。まさにジョーカーだ。ノーラン版のジョーカーが強烈すぎてその次が演じられなかったのだが、この新しいジョーカーも個人的には悪くないと思う。

第7位 シン・ゴジラ Shin-Godzilla directed by 庵野秀明 ★★★
2016年極私的映画ベスト10
 この映画の成功は、パニックムービーをつくろうとせず、日本マーケットのみに集中し、現実の政治シミュレーションの群像劇に徹したことによるだろう。この映画ももとはと言えば台北行きの飛行機のなかで見たものを、もう一度IMAXで見直してみたのだが、それでもなおその展開に引きつけられた。人物以外オールCGのジャングルブックとは対極にある、稚拙に見えるCGもまたノスタルジーを引き出すための狙い通りなのかもしれない。

第6位 レヴェナント The Revenant directed by Alejandro González Iñárritu ★★★
2016年極私的映画ベスト10
 もしも昨年のアカデミー賞発表の時点で、「バードマン」のあとにこの「レヴェナント」が出来るとわかっていたら、監督賞はアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥではなく、多くの人々?の期待どおりマッドマックスのジョージ・ミラーが受賞していただろう。奥行きと広がりのある美しい冬の絵に圧倒された(もちろん撮影賞受賞)。実に映画らしい映画であった。

第5位 エクスマキナ  Ex Machina directed by Alex Garland ★★★1/2
2016年極私的映画ベスト10
 人工知能の恐怖という語り尽くされた感のある使い古されたテーマを、現在のテクノロジーとそれによって規定された日常の延長として、スタイリッシュに、クールな絵で描く。人工知能ロボット・エヴァのキャスティングが極めて重要だが、アリシア・ヴィキャンデルは素晴らしかった。タイトルは、演劇用語である「デウス・エクス・マキナ(劇の内容が錯綜してもつれた糸のように解決困難な局面に陥った時、絶対的な力を持つ存在=神)」からつけられている。この映画の結末を考えると、実に意味深だ。

第4位 イット・フォローズ It follows directed by David Robert Mitchell ★★★1/2
2016年極私的映画ベスト10
 “それ”はひとにうつすことができる、“それ”はゆっくりと歩いてくる、“それ”に捕まると必ず死ぬ、“それ”はずっとずっと、憑いてくる...極めて恣意的なルールに規定されたこの映画は、極私的にはゲーム小説、ゲーム映画があまり好きでない私にとってはスルーされるものだった。気になったが映画館では見なかったのだが、夏過ぎにDVDで見てやられた、と思った。画面のどこかで、必ず誰かが歩いている。それがitなのかどうかもよくわからない。計算されているものだが、徹底的に作り込んだ美しい構図が物語に必要な要素だとわかる。監督買い候補のひとりとして注目したい。

第3位 湾生回家 directed by 黃銘正 ★★★1/2+
2016年極私的映画ベスト10
 戦前に台湾で生まれ、日本の敗戦とともに”帰国”した湾生日本人を描いたドキュメンタリー。台湾の景色をみて、ここが私の祖国なのだと涙す年老いた人たちをみて、私も涙する。個人的にも懐かしい花蓮の田舎の風景。台湾に暮らした経験がなければこの映画を見てその涙を理解することはできないだろう。湾生三世の台湾人が、亡き湾生の祖母の日本での足跡を追う物語も配置され、単なる台湾愛に終わらないところも素晴らしい。傑作のドキュメンタリーだ。

第2位 ハドソン川の奇跡 Sully directd by Clint Eastwood ★★★★
2016年極私的映画ベスト10
 85歳を超えて、意欲的な作品を作り続けるクリント・イーストウッドの傑作。昨年極私的トップ1「アメリカン・スナイパー」に続きトップ3入りである。全編IMAXカメラで撮影されたこの映画をIMAX劇場で見ることができてよかった。事実にもとづいているので、驚きもない。それを前提として、イーストウッドはパイロットSullyのプロフェッショナリズムに焦点を当てた。プロフェッショナルなその姿勢に感動し、涙する。歳のせいか、映画をみて最近は泣くことも以前よりは増えたのだが、この種の涙は初めてだ。10年に1本の傑作を80歳を超えてなお、しかも二年連続で創るイーストウッドの創造力と意志には、ただ感服するばかりだ。

第1位 スター・ウォーズ フォースの覚醒 Star wars:The force awakens directed by J.J. Abrams ★★★★
2016年極私的映画ベスト10
 客観的に考えれば、この映画が第1位になる理由はあまりない。プロットは、エピソード4あるいはエピソード6の焼き直し。デス・スターの改良版キラースターベースを破壊しにいくのに、時限サスペンスを感じられない。悪役は中二病。この物語に続くエピソード8,9についても、予定調和的なストーリーが容易く思い浮かべられる。
 それにしても、だ。
 画面を縦横無尽にファルコン号が飛ぶだけで、マズカナタの城の麓に広がる湖にXウィングが現れるだけで、タイ・ファイターとドッグファイトするだけで、ただただ嬉しくなる。何度も見たくなる。JJはおそらくは計算してこのようなプロットに、映画に落ち着けたのだろうと思う。今更奇をてらう必要はない。ただスターウォーズの世界に見を投じるだけで、我々は幸せなのだ。こうして考えると、映画が極めて個人的なものだとつくづく思う。エピソード4が初めてのスターウォーズだった私のように、この映画が映画館での初めてのスター・ウォーズだった当時6歳の息子は、おそらく彼の何十年と続く人生においてこの先もスターウォーズに熱狂し続けるのだろう。

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Posted by 仲村オルタ at 12:44
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職人のごとくただ書くのみ(としたい)。
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台湾より沖縄復帰後1年で関西へ。まさかの東京暮らしを経て、流れ流れて今は沖縄暮らし。
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