2006年05月05日

●島コラム小 137 導かれるとき、導かれる場所


1)
 此処沖縄には、行きたいのに行けない場所やなんと
なく足を踏み入れるのを躊躇してしまう場所が多い。
例えばそれは久高島であったりする。あるひとは、
何度行こうとしても天候不良で船が出なかったり、あ
るひとは、不測の用事がいつも突然起きて、船着き場
にさえたどり着けなかったりというようなことを、い
くつも聞く。多少大げさに語られることはあるにして
も、久高島へは行くべき時期があるのだろうと思う。


2)
 先日久高島へ行った。今回で四度目になる。一度目
はおそらく99年くらいの暑い夏の日だった。恐いも
の知らずの私は、他の島へ行くのと同様に素潜り三点
セットを持って船に乗り込んだのだけれど、海を見て
いるうちに恐くなって入るのを止めた。二度目はその
次の年に出かけた。自転車を借りて、島を巡っている
とスコールが降ってきて、当時建設中だった宿泊交流
館の軒下で雨宿りをした。森に降る細かい雨は息をの
むほど美しく、この雨宿りのために今回は島に呼ばれ
たのだろうと思った。三度目は去年の冬だった。砂浜
に小動物の骸骨を見つけた。恐い気はしなかったけれ
ど、生と死が隣接していることをまた実感した。四度
目は、雨のために殆ど島を巡ることが出来なかった。
完成した宿泊交流館の屋根の下で雨宿りをした。二度
目のときよりも、しっかりと雨は落ちていた。比嘉康
雄さんのイザイホーの写真が展示されていて、それを
眺めた。比嘉さんは、平良孝七さんと並び、私の好き
な沖縄の写真家だ。


3)
 次の日はよく晴れた。久高島へはこの日に行くべき
だったという気はあまりしなかった。なんとなく中部
方面に出かけ、なんとなく海中道路を通っているうち
に、浜比嘉島へ行こうと思った。浜比嘉島も、久高島
と同じく神の島と呼ばれるところだ。琉球の始祖アマ
ミキヨの墓の近くで、遅ればせながらやってきた湿
気を含む夏の風を頬に受け、大潮で遠浅の海を歩くモ
ズクとりの人々をぼんやりと眺めていた。その後、い
つもは通らない道に車を走らせると、導かれるように
シルミチューの霊場にたどり着いた。浜比嘉島にこん
な場所があるなんて、いままで知らなかったし、知る
機会もなかった。あるいは何かの読み物で読んでいた
としても、誰かに話を聞いたとしても、さほど関心を
払うこともなく見過ごし、あるいは聞き過ごして、
まったく記憶に残っていなかった。108段も続くという
石階段を登りきると、天地を開き始めた琉球開闢(カ
イビャク)の祖神であるアマミキヨ、シネリキヨの居
住跡と言われる洞窟があり、そのなかに女性を象徴し
た鍾乳石が祀られている。ここは子孫繁栄と豊穣を願
う拝所だ。洞窟の中で跪き、現在と未来と過去を等価
に祈った。近く対面するであろう、母なる川ガンガー
が目の前に広がるような気がした。

●島コラム小 137 導かれるとき、導かれる場所●島コラム小 137 導かれるとき、導かれる場所

4)
 私は極端な運命論者ではないが、もちろん、偶然な
どひとつもないと思っている。いつもそこにある場
所でも、導かれるべきときがある。私という一個人は、
過去の経験や罪や記憶の集合体であるが、同時に未来へと
つながる鍵をもつ可能性だと信じたい。心地よい浜風を頬に
受けながら、私は島を後にした。長い長い海中道路は、
明るい陽光に照らされてこの先どこまでもまっすぐに
続いている。そんな気がした。


久高島ホームページ
http://www.kudakajima.jp/
シルミチュー霊場解説
http://allabout.co.jp/travel/travelokinawa/closeup/CU20040511A/
シルミチュー紹介動画
http://www.okinawabbtv.com/travel/kankou/kaisetsu/b04020281_shirumichu.htm

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Posted by 仲村オルタ at 07:52
この記事へのコメント
浜比嘉島は近いし、ぜひ行ってみようと思ってます。
108段上るのね。知らなかった(笑
Posted by lotus55 at 2006年05月05日 10:54
>lotus55さん
随分遅れました。コメントありがとうございます。行ってみてください。雨の後は、とくに緑が心地よいと思います。
Posted by おるた at 2006年06月04日 12:12
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職業:書き物一切。
職人のごとくただ書くのみ(としたい)。
公式サイト alt99.net
台湾より沖縄復帰後1年で関西へ。まさかの東京暮らしを経て、流れ流れて今は沖縄暮らし。
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