2004年10月29日

●島コラム小 79 九州芸術祭文学賞沖縄地区優秀賞受賞

1)
 去年宮古に行った折に、カンカカリャ(ユタ)の判示を初めて
受けた。当時、わたしは沖縄に来たもののこれからどうなるもの
だろうと漠然とした不安を抱えていた。少し不謹慎かもしれない
が、やはり作家的な興味もあり、宮古に行く折に判示を受けた。
膝を叩いて歌を歌い判示を行うその方は、マスメディアにも登場
したことのある結構有名な方である。平良市内の自宅を訪れ、わ
たしのこれまで、わたしのこれからなど話をしたとき。物書きを
今は志しているがどうなるだろうかという問いに、彼女はこう言っ
た。「あなたはこれまでやりたいことを自分で選んできているで
しょ」と。わたしは、この一言でハッと気づいた。確かにそうだ、
わたしは前の仕事を選んだのも、それを辞めて沖縄に来たのも、
全部自分で選んできた。あとは書き続けるしかないのだと思った。

2)
 沖縄には3つの主要な地域文学賞がある。沖縄タイムス主催の
「新沖縄文学賞」、琉球新報主催の「新報短編文学賞」、そして
財)九州文化協会主催の「九州芸術祭文学賞地区優秀賞」である。
それぞれ規定枚数が100枚以内、40枚、55枚という分量の
短編賞だ。これまで芥川賞を受賞した又吉栄喜氏、目取真俊氏を
はじめとして、沖縄出身の小説家の多くは必ずこの3賞のいずれ
かを受賞している。特に又吉氏、目取真氏は3賞すべてを受賞し
ており、わたしも通過点としては必要だろうと考えた。今年の5
月頃に、今年はこの3本に応募しようと決意し、準備した。いま
まではテーマやアイデアからストーリーを組み立てるケース
が多かったが、わたしの弱点であるキャラクターを重視し、キャ
ラクターから組み立てる小説を書こうと考えた。

3)
 今年の4月に、「上等な人生 石と拳銃」という400枚くら
いの中編の初稿を完成させた。仲村オルタ名義初の作品である。
これは未だ最終稿に至らず、まだ誰にも見せていないのだが、こ
の「石と拳銃」に出てきたキャラクターを主人公、脇役として、
いくつかの短編のアイデアが浮かび、5月くらいからそれを短編
として仕上げていった。最初の作品「犬の失踪、ビジュルの再来」
は65枚くらいのもので、6月末締切の新沖縄文学賞に応募した。
次の作品「ビューティフル・ワールド」は50枚から55枚とい
う厳しい制約内に仕上げて、これは8月末締切の九州芸術祭文学
賞に応募した。そして、10月末締切の新報短編賞向けには「黒
い人、眠る人」を応募予定である。

4)
 10月中旬のとある金曜日の夕方に携帯電話に連絡が入った。
九州芸術祭文学賞地区優秀賞選考会場からだった。主催する県の
担当者に続き、又吉栄喜氏から「あなたの応募作が九州芸術祭文
学賞沖縄地区優秀賞に選ばれました。おめでとうございます」と
言われた。もちろん嬉しかったのだが、嬉しい気持ちよりも、ホッ
とした気持ちのほうが強かった。過去には新聞に結構大きく載っ
たりしていたのをwebで確認していたので、取材もあるかもしれな
いと思い少し身構えていたのだが、今年は台風直撃と重なったせ
いかどうか分からないが、新報のみ少し小さい記事として取り上
げられた。取材もなかった。その結果を知ってから、「犬の失踪
・・」が新沖縄文学賞の最終候補にも残っていないことを知った。
こちらの作品のほうが個人的には気に入っていたので、残念だっ
たのと、まあそんなものかと思ったりした。

5)
 地区優秀賞を取った「ビューティフル・ワールド」は、各地区
優秀賞10編のなかから最優秀作を選ぶ本選に進む。東京から沖
縄に戻った写真家崩れの男と、軍人の恋人として沖縄に訪れたラ
ティーノの物語なのだが、何しろ短編なのであらすじは書きにく
い。九州芸術祭文学賞は沖縄の二氏のほか、大道珠貴氏、帚木蓬
生氏などを輩出している著名な地方文学賞なので、正直なところ
期待はしているが、今更修正がきかないので、あとはただ結果を
待つだけだ。今回の受賞でまだ何かが決定的に変わるわけでもな
く、一気に展望が開けたというわけでもない。ただ、書き続ける
ことによってのみ、自分自身で道を選ぶことができるのだという
確信を更に強くした。それだけだ。わたしはこの茨の道の入り口
の招待状を手にしただけだ。結果にかかわらず、これからもコン
スタントにリリースしていきたいと思う。

(短況)
 本来はこのコンテンツは先週向けを考えておりましたが、上記
の電話を頂いた際に発表まで公表を控えて下さいと事務局に言わ
れており、わたしが宮古にいてしかも台風で孤立していたために、
公表が確認できず一週ずれました。先週予告では「うずまきサン
ド」を取り上げる予定としましたが、このコンテンツは次週にし
たいと思います。作品はいずれWEBサイトにアップしたいと思っ
ています。これからも、「島コラム小」とともに、仲村オルタの
小説もよろしく御願い申し上げます。オルタ

 先日九州芸術祭文学賞沖縄地区優秀賞を頂き、九州地区本選に
ノミネートされていた拙作「ビューティフル・ワールド」は、惜
しくもというか予想どおりというか、本選では選ばれませんでし
た。ご声援ありがとうございました。ただ、今回の受賞作該当な
し、佳作のみ選出という結果については、複雑な気持ちになりま
す。3月に授賞式が福岡であるそうですが、もちろん行くことは
ないと思います。賞金は既に前借りして、うちにある膨大な紙資
料、雑誌の高速スキャンのためのスキャナーsnapshot購入と、読
み上げソフト(world voice)購入に充ててしまった。まあどちら
もこれからの創作活動のための投資だと思っています。おるた
(2005.2.14)

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Posted by 仲村オルタ at 00:00
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仲村オルタ
仲村オルタ
職業:書き物一切。
職人のごとくただ書くのみ(としたい)。
公式サイト alt99.net
台湾より沖縄復帰後1年で関西へ。まさかの東京暮らしを経て、流れ流れて今は沖縄暮らし。
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