2012年12月31日

2012年極私的映画ベスト10

毎年続けている映画ランキングである。2011年12月~2012年11月公開の映画を対象に、あくまでも個人的に面白いもの、よいものをランキングしてみた。毎年同じ事を書いているが、映画も、美術も、小説も、おもしろいかおもしろくないしかない。それが持論だ。
 今年はいつもより多く映画を観た。映画を観れば観るほど、自作の創作へ近づく気もするし、それから遠のく気も同時にする。果たして今年はどちらへ転がるやら。

10.プロメテウス Prometheus(監督:リドリー・スコット)
2012年極私的映画ベスト10
 多くの人々がテレビCMをみてこれは宇宙の謎を解くロマンティックな物語かと思って出かけたが、詐欺的なまでにそれを裏切る。意図的な広告戦略としたら恐ろしいまでに斬新だ。これはホラー映画エイリアンの前日譚。ゆえに残忍であって当たり前なのだ。エイリアンのあのダークな雰囲気はないが、僕はけっこう好きな映画だ。要するにエイリアンにやや放り出しぎみに登場する意味不明な巨人宇宙人を、リドリー・スコットがオタク的に再説明したかっただけの映画なのだ。騙されたと思っても(たぶん)リドリー・スコットは悪くはない。★★★

9.ドラゴンタトゥーの女 The Girl with the Dragon Tattoo(監督:デヴィッド・フィンチャー)
2012年極私的映画ベスト10
 ジェームズ・ボンド五〇周年記念映画スカイフォールも素晴らしかった、ダニエル・クレイグの新しいシリーズ。監督買い作家のひとりデヴィッド・フィンチャーが、いつもの映像的お遊びを抑えて撮った。基本的にはオーソドックスな横溝正史的一族ミステリーだが、探偵コンビのダニエルと【リスベット】ルーニー・マーラの異色さ、その背景が新しく、長い上映時間を飽きさせない。あと二本あるはずだが、待ちきれず原作を読み、オリジナル映画シリーズを見てしまった今、デヴィッド・フィンチャーが監督を続けなければ映画館では観ないかもしれない。★★★


8.エージェントマロリー Haywire(監督:スティーヴン・ソダーバーグ)
2012年極私的映画ベスト10
 個人的に最も好きな映画監督のひとりであるスティーヴン・ソダーバーグの新作。総合格闘家ジーナ・カラーノを主役に据えて、アクションスパイ映画とは思えぬ相変わらずの抑えた画面と展開でソダーバーグ節を見せる。今年は秀作が多かったので、この順位だが、決して質が悪いわけではない。日本ではおそらくオーシャンズ11以外には興行的に成功しているわけではない。2012年はもう一本「マジック・マイク」を撮っていたのだが、こちらは日本公開はあるのだろうか。★★★+

7.リアル・スティール Real Steel (監督:ショーン・レヴィ)
2012年極私的映画ベスト10
 ロボットボクシングを題材にしたSF格闘技父子愛もの。正月早々泣いてしまった映画だ。ロッキーをなぞるようなあまりにも王道でベタな話なのだが、最近父子ものに弱いので仕方がない。★★★+

6.黄金を抱いて翔べ
2012年極私的映画ベスト10
 思わぬ傑作だった。これまで高村薫原作映画はどこか中途半端なものばかりだった。デビュー作であるケイパーものの原作に忠実な映画化は、俳優陣の素晴らしい演技もあり、掘り出し物の秀作となった。★★★1/2

5.ファミリー・ツリー The Descendents(監督:アレクサンダー・ペイン)
2012年極私的映画ベスト10
 監督は「アバウト・シュミット」「サイドウェイ」のアレクサンダー・ペイン。この映画もアカデミー脚色賞を取っている。主演ジョージ・クルーニー。この映画が5位になることを思うと、今年いかに映画をみてきたか、そのクオリティがどれも高かったかと思う。実際ベスト5以上はどの作品がナンバーワンになってもおかしくないのだ。昏睡状態にある妻には浮気相手がいた。娘とともにその浮気相手を探す。客観的にみれば物凄く悲劇的な話だが、悲劇を悲劇としてのみ描かないことがこの映画の素晴らしさだ。娘のとぼけた彼氏役もいい。ブログにも書いたが、死にゆく妻に泣きながらかけるセリフが素晴らしい。Goodbye, Elizabeth. Goodbye, my love, my friend, my pain, my joy. Goodbye. Goodbye. Goodbye.
 ★★★★
http://alt.ti-da.net/e3850319.html

4.ドライヴ Drive(監督:ニコラス・ウィンディング・レフン)
2012年極私的映画ベスト10
 一時期この映画はダークナイトをおさえて今年のナンバーワンかもな、と思っていた時期があった。上半期ではナンバーワンだった。腕利きのドライヴァーで強盗輸送の運転人の孤独な男が、この世界で守りたいものを見つけた。それは隣人で、犯罪人の妻とその子どもだった。クールな演出、演技、サウンドトラックは物悲しいテクノ、シンプルだがハッとする場面をちりばめた秀逸のプロット。こんな映画を撮ってみたい見本みたいな話だ。監督ニコラス・ウィンディング・レフンはもう何本か観てみたい気になる監督だ。★★★★

3.アルゴ Argo(監督:ベン・アフレック)
2012年極私的映画ベスト10
 イラン革命が起こりアメリカ大使館が占拠させる直前に逃亡し、カナダ大使館に逃げ込んだ大使館員。彼らを救出するためにCIAの人質救出スペシャリストは、架空のSF映画撮影ロケという奇想天外の方法で救出作戦を敢行する。10月末に公開された俳優ベン・アフレック監督の実話に基づくこの映画は、サスペンスとしては王道であり、まさに手に汗握るものだった。徹底的に焦らし、ハラハラさせる。アラン・アーキンとジョン・グッドマンの脇役コンビも、映画的バランスをとるのに絶妙な味を添える。ゴールデン・グローブ賞も順当にノミネートされている。ぜひともアカデミー賞まで駆け上がってほしい逸品である。★★★★

2.ものすごくうるさくて、ありえないほど近い Extremely loud and incredibly close(監督:スティーブン・ダルドリー)
2012年極私的映画ベスト10
 今年2月に公開されたこの映画は喪失と再生を描く深く静かな感動に満ちた映画だ。9.11を真正面から描いており、それゆえにアメリカでは賛否両論だったらしい。確かに自分が当事者ならば、どんな創作も受け入れられないだろう。その一方で最近のハリウッド大作を見ていると、アベンジャーズやトランスフォーマー3などは、こんなシーンはいいの、と思えるほど9.11を想起させるシーンが出てくる。当事者ではない創作家が、真摯に喪失と再生に向き合い、seek&findの基本形プロットのなかで逃げずに描く。それを成功させたのは本作だと思う。★★★★

1.ダークナイト・ライジング The Dark Knight Rises(監督:クリストファー・ノーラン)
2012年極私的映画ベスト10
 いろいろ考えたが、やはりこの映画を今年のNo.1とした。前作ダークナイトに比べて云々ということが言われるが、確かにすべての映画的要素において前作に勝る要素はひとつもない。前作はプロット、監督、俳優の3要素とも完璧で、歴史的な名作だった。おそらくはクリストファー・ノーランも、同じ質感のものでは前作を超えられないことを自覚し、初めからまったく異なる質感の作品を作ろうとした。前作が人間の選択をめぐるドラマであるとするならば、この映画は、バットマンとベインの肉弾戦とその結果に象徴されるように、力で屈すること、そして敗北からまさに這い上がるためのドラマだ。そのうえで、このトリロジーに明確な意味付けを与えた。更にいえば、キャット・ウーマンのキャラクター、演技ともよかった。どんでん返しはプロットのなかでは重要な要素だが、4度観たあとでは、どうでもよいような気さえしてくる。ようするに僕はこの映画とバットマンが好きなのだ。★★★★

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Posted by 仲村オルタ at 18:16
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台湾より沖縄復帰後1年で関西へ。まさかの東京暮らしを経て、流れ流れて今は沖縄暮らし。
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