2006年04月20日

●島コラム小 136 ヤールーのジミー

●島コラム小 136 ヤールーのジミー


1)
 沖縄に来て4度目の4月を迎えるのだけれど、今年
の寒さは異常だと思う。例年はゴールデンウィークが
明けたら、すぐに梅雨入りなのだけれど、その予感が
まったくしない。
 この季節の変わり目には、明らかに空の色が変わる
日がある。白い建造物が、汚れた鈍い白色から、光を
受けてまぶしいほどの白色に輝く潮目の日だ。この間
玉城の百名ビーチあたりの海まで少し車で
出かけてみたけれど、まだその気配がまったくしない。
ここまで焦らされると夏がいつも以上に恋しくなる。

2)
 夏になると、ヤールーが出てきて、夜な夜な啼いて
いる。私の家での作業場所は、ダイニング・テーブル
か自室の机かのどちらかなのだけれど、特にダイニン
グで作業をしていると、部屋の内外を問わず、よく啼
いている。
 そのなかにちょろちょろと顔を出すたぶん同じヤー
ルーがいる。個体識別が正確にできているわけではな
いのだけれど、私は同じヤールーだと確信している。
特に理由はないけれど、彼にジミーという名前をつけ
てみた。宮城でもオサムでもなんでもよかったのだけ
れど、なんとなくジミーになった。名前をつけると、
不思議なもので、愛着もそれだけ沸いてくる。

3)
 ジミーはすぐに啼かない。ふと顔をあげると、白い
壁にぺとりと張り付いている。こちらの視線に気づく
と、じっと固まる。ヤールーの視野角は正確にはわか
らないけれど、カメレオンが360度というから、そ
れなりに広いのだろう。こっちを見ているのかもしれ
ない。ああ、また来たなと思ってしばらく見ていると、
見ている間はじっとしていて動かない。少し気のない
素振りをしているうちに、こそこそと何処かに隠れて
しまう。ああ、何処かに行ってしまったなと思うと、
物陰からキュッキュッキュと啼き声がする。しばらく
啼いた後、また物陰から出てくる。また目が合う。こ
の繰り返しだ。

4)
 想像するに、彼(♂と決めつけている)にもこちら
に少し関心があって、放っておかれたくはないのだけ
れど、いつもかまわれたくはないと思っているようだ。
前に書いたように、なんだか自分を見ているようだ。
ひとり上手のようでいて、やはりひとりでは居られな
い。ジミーと会話が出来たなら、ひとり暮らしも、い
くらか楽しくなるだろうにと思う。エース・ベンチュ
ラみたいになるかなと自嘲する。

5)
 こんな文章を書いていて、はて、ヤモリは何年生き
るんだろうと思った。寿命が1年とかだったら、去年
のジミーと今年のジミーは明らかに違うことになる。
webで調べてみると、はっきりしたことはわからない
のだけれど、「2年で卵を産めるようになって、長生
きする個体だと10年ぐらい生きちゃうかも知れない」
という意見ものっていた。

6)
 ほっとしてみたものの、そういえば最近ジミーが現
れていない。おそらく夜は少し寒いからだろう。一日
も早い夏の訪れとジミーとの再会を心待ちにしている。

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Posted by 仲村オルタ at 22:36
この記事へのコメント
私のヤールーも見てね^^
Posted by lotus55 at 2006年04月23日 21:49
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仲村オルタ
仲村オルタ
職業:書き物一切。
職人のごとくただ書くのみ(としたい)。
公式サイト alt99.net
台湾より沖縄復帰後1年で関西へ。まさかの東京暮らしを経て、流れ流れて今は沖縄暮らし。
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