2019年03月31日

スパイク・リー復活のフローティング・ドリー・ショット

 ブラック・クランズマンを観た。久しぶりのスパイク・リーだ。邦KKKに潜入捜査した黒人とユダヤ人の刑事コンビの話(クランズマンというのはクランのメンバーということ)。コメディにもシリアスにも振れすぎない絶妙なバランスの良作だった。これまで何作もスパイク・リー作品に出てきたデンゼル・ワシントンの息子ジョン・デヴィッド・ワシントンが主演というのも、なんだか感慨深い。
 1989年のDo the Right Thing(当時32歳)で一躍時の人となるスパイク・リーも、もう62歳だ。先日アカデミー賞の授賞式で久しぶりに姿を観たときに、正直言って歳をとったなと思った。「グリーンブック」の作品賞受賞に噛み付いていたことからすると、その徹底した姿勢は健在だ。グリーンブックは確かに白人にとって耳触りの良い美談かもしれないが、常に差別される側からの視点で映画を取り続けたスパイク・リーが許せないのも理解できる。
 ただ、極私的にスパイク・リーのベストをあげろと言われれば、僕は「モ・ベター・ブルース」と「インサイド・マン」の二本を上げる。いずれも、いわゆる差別される黒人という視点を前面に出している作品ではない。しかし随所にスパイク・リーのこだわりと作家性は感じられる。言いたいことを正面に出さず、破滅型ラブストーリーやクリミナルサスペンスでもスパイク・リーを感じさせる。それが良いのだろう。

スパイク・リー復活のフローティング・ドリー・ショット

 今回 Black K Klansmanを観ていて、一番うれしかったのは、スパイク・リーしか取らない登場人物が歩いているのに、なぜか台車に乗って(いると思われるほど)滑らかに平行移動する、いわゆるフローティング・ドリー(あるいはダブルドリー)・ショットのシーンだ。スパイク・リーの映画をすべて観ているわけではないが、すべての映画で必ず使っているはずだ。少なくともDo The Right Thing以降30年あまり続けている。大抵は物語のエモーションがピークに達するときであったり、どうしてここでというところで登場するのだが、本作では映画終盤にそれは訪れる。ネタバレになるので詳細は書けないが、ファンタジーとリアルの境目にあらわれる神のお告げのようなインパクトだった。このシーンを境目に、映画はファンタジーとリアルの狭間でメタ的に昇華する。この実話をもとにした(とされる)ファンタジーが何を言いたい映画なのかをはっきりと提示するのだ。
 スパイク・リーのフローティング・ドリーショットばかり集めたショートフィルム?がネットに公開されていたのでリンクを貼っておく。



  • LINEで送る

同じカテゴリー(映画レビュー)の記事

Posted by 仲村オルタ at 14:43
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

マイアルバム
プロフィール
仲村オルタ
仲村オルタ
職業:書き物一切。
職人のごとくただ書くのみ(としたい)。
公式サイト alt99.net
台湾より沖縄復帰後1年で関西へ。まさかの東京暮らしを経て、流れ流れて今は沖縄暮らし。
オーナーへメッセージ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 11人
アクセスカウンタ