2019年12月31日

2019年極私的映画ベスト20 その2(20位から11位と特別枠1)

 昨日に続き、2019年の映画ベスト20。20位から11位には、思索的なSFや大御所の映画が並んだ。

◆特別枠1 マトリックス4DX 監督:ウォシャウスキー兄弟(今姉妹)
 エポックメイキングな映画がある。映画の面白さで、時代を作る映画だ。これらの映画はその後しばらく「○○に次ぐ」とか「あの○○を超えた」というように、ベンチマークされ、宣伝に利用される。例えば、80年代以降ではダイ・ハード、シックス・センス、タイタニック、アバターなどなど。
 サイバーSFジャンルでは、やはりこのマトリックスだろう。今回は沖縄にできたユナイテッドシネマの4DXにて、家族で鑑賞。やはり素晴らしい。哲学と、カンフーアクションと、トリッキーな撮影による映画的快楽。もうおそらくは10回目くらいになるこの映画を古く感じることもなく楽しんだ。息子はその後しばらくの間、Rage Against The Machineばかり聴いていた。
2019年極私的映画ベスト20 その2(20位から11位と特別枠1)

第20位 アニアーラ ANIARA ★★★ 監督: ペッラ・カーゲルマン&フーゴ・リリヤ
 スウェーデンのノーベル文学賞受賞作家ハリー・マーティンソンの代表作「アニアーラ」を実写映画化したスウェーデン製SF大作。大作とはいえ、19位にでてくるセルビアSFと同様に、哲学的で思索的だ。火星移住のための乗客をのせたアニアーラ号は、故障のため軌道をはずれ、宇宙をさまよう。自暴自棄になった乗客は、快楽に溺れたり、人工知能を神と崇めたり。そこへ救出船が近づくのだが、それはまるで石棺のようだった・・・というもの。はっきりした解の提示を求めないが、やや放り出し感が強すぎるように感じる。原作も読んでみたいのだが、たぶん途中でやめてしまいそうだ。
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第19位 A.I.ライジング ★★★ 監督:ラザール・ボドローザ
 セルビア発のSF作品。孤独の任務に同行したアンドロイドに恋をして、人間の女とする欲望を抱いてしまった中年宇宙飛行士の話。設定が良いが、最後はやはりアシモフのロボット工学三原則に帰着するやや凡庸な終わり方だった。SF作品は哲学とも、情愛とも等距離で成立することをあらためて感じる。文字で読んでみたい映像だが、文章にするとおそらくまわりくどく小難しくなってしまうのだろう。
2019年極私的映画ベスト20 その2(20位から11位と特別枠1)

第18位 ハイライフ ★★★+ 監督:クレール・ドニ
 これも難解で哲学的なSF映画だ。この3本はどれも性愛を扱い、倫理を問い、自分自身と向き合うことを要求する。囚人をのせ、ブラックホールへと向かう宇宙船での出来事。アニアーラ、AIライジング同様に、宇宙船は彼らにとって世界のすべてであり、そこから抜け出すことはできない。その密室において、乗組員は性的な接触を禁じられており、女医だけが神のように君臨している。同じシチュエーションでまったく別の話も書けそうな気もする。今年はブラッド・ピットのアド・アストラや、デイミアン・チャゼルのファースト・マンもあったが、このハリウッド作2本より、ヨーロッパ系のこの3本のほうが、極私的には深い思索に落ちることができた。主演のロバート・パティンソンは、次のバットマンに決まったという。ジュリエット・ビノシュの爬虫類のような背中が妙に印象的に一本だ。
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第17位 アリータ:バトル・エンジェル ★★★+ 監督:ロバート・ロドリゲス
 この映画も興行的にも、批評家的にもうまくいったとは言えない(ただし世界興行収益としては中国であたったようで悪い成績ではない)。ジェームズ・キャメロン他脚本、ロバート・ロドリゲス監督作品で映画館に足を運ばないわけがない。不自然で多すぎるアリータの目が気味悪いせいだとか、原作を活かしきれなかったキャラ設定のせいだとかいろいろ言われるが、単純にロドリゲス向きではなかったのかもしれない。木城ゆきとによる原作「銃夢」びファンが多いようで、日本の原作ファンにはあまり評判が良くないようだ。原作は読んでいないが、ロドリゲスファンの僕としては、展開やキャラ設定は面白いが、やや物足らない感じだ。アバター続編を前に今年のキャメロン印は二発とも不発だったが、アバター不発、というのはなんとしても避けたいところだ。
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第16位 世界の涯ての鼓動 ★★★+ 監督:ヴィム・ヴェンダース
 久しぶりのヴィム・ヴェンダースの長編のような気がする。いくつか撮ってはいるようだが、個人的には2000年のミリオンダラー・ホテル以来19年ぶりのヴェンダースだ。とはいえ、この映画は映像的な隙間の多いかつてのヴェンダースのスタイルで撮られてはいない。良い意味でも悪い意味でもハリウッド的な、ストーリーを語る意志を直接的に感じる作品だ。それでいて、ストーリーが進むのが遅いので、全体の印象はぎこちないものだが、美しい画面のなかで、アリシア・ヴィキャンデル(この映画のアリシアはなんと美しいのだろう)とジェームズ・マカヴォイのふたりが戯れる絵は、今年観た映画のなかでも強く印象に残るものだった。
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第15位 ハウス・ジャック・ビルト ★★★+ 監督:ラース・フォン・トリアー
 こちらも寡作ながら公開すればトップ10常連のラース・フォン・トリアー監督の新作。シリアル・キラーを題材にしたこの映画を観終わって最初に思ったのは、この映画は語られるべきものなのだろうか、ということだ。言い換えれば、トリアーは何をいいたいのだろう、とトリアー贔屓の僕でもそう思う。前作ニンフォマニアックも、冷静に考えれば同様に「これは語られるべきなのだろうか」と思えるものだ。映画のなかの出来事にことさら倫理を訴えるつもりもないが、さすがに罪のないこどもが撃ち殺されるシーンには辟易した。「人はだれでもシリアル・キラーになれる。もしこの映画にメッセージがあるとすれば、そういうことになるだろうな」とトリアー自身が語っているのだから、もうどうしようもない。生理的に受け入れるか、受け入れられないかを迫る映画なのだろう。観終わったあと、ボウイのフェイムが頭の中でグルグル回っていた。
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第14位 ドクター・スリープ ★★★+ 監督:マイク・フラナガン
 スティーブン・キング原作、スタンリー・キューブリック監督の映画「シャイニング」が公開されたのが1980年。それから29年を経て出来上がった続編「ドクター・スリープ」は、ターミネーター:ニューフェイトと同様に興行的にも、批評家的にも失敗と言われるが、極私的には観ている間楽しかった映画だ。楽しいというのは変な言い方だ(実際に野球少年が殺されるシーンは辛かった)が、前作に創造性を巡って対立したというキングとキューブリックの作品感を仲裁しつつ、そのいずれにも愛情を感じさせる映画となっている。オーバールックホテルへ向かう車を俯瞰で撮るショット、双子のショットなど、ただそれが出るだけで嬉しくなった。続編としては、当初想定していた続編でないことはよくわかる展開だったが、おそらくは特殊能力シャイニングをもっと探求したいと思ったときに、シャイニングを食って生きる種族を思いつき、物語をドライブさせたのだろう。
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第13位 運び屋 ★★★+ 監督:クリント・イーストウッド
 いったいクリンスト・イーストウッドの創作意欲はどこまで続くのだろう。88歳にしてリリースされたこの監督・主演作は、このところの数作品に共通した肩の力の抜けた作品だ。まるでアメリカン・スナイパーで消耗した魂を、自ら静かに癒している。淡々と撮り続けるこの姿勢は、まるで習慣的に行きつけのカフェに通う日常を切り取っているかのようだ。2020年初頭にも、また監督作が公開される。映画的快楽がそれほど期待できなくとも、また映画館に足を運ぶことになるだろう。
2019年極私的映画ベスト20 その2(20位から11位と特別枠1)

第12位 バードボックス ★★★+ 監督:スサンネ・ビア 
 年末になると、NETFLIXは加入攻勢を強めてくるようで、年末に話題作をぶつけてくる。去年は12月にこの映画が配信され、ローマと合わせてみるために再加入した(観そびれていたコーエン兄弟のバスターのバラードも観た。年間トップ5に入るくらいに素晴らしかった)。見てしまうと、恍惚の表情を浮かべながら自殺してしまうという奇妙な病気が蔓延する設定は、一歩引いて考えれば荒唐無稽に思えるが、冒頭の川下りの逃亡シーンから引き込まれると、妙なリアリティがある。エンディングは予定調和だが、サスペンスフルで母親の強い愛が物語のドライブになる、終末映画ならではの現実感と虚無感のバランスがとてもいい。
2019年極私的映画ベスト20 その2(20位から11位と特別枠1)

第11位 ザ・プレイス 運命の交差点 ★★★+ 監督:パオロ・ジェノヴェーゼ
 戯曲的な映画だ。イタリアン人監督パオロ・ジェノヴェーゼの作品(この映画が良かったので、前作「大人の事情」も観た)。カフェの奥に座る預言者のような男。彼の元に問題を抱えた男女が多数やってくる。預言者はその悩みの解決(あるいは欲望の実現)に、なにか倫理的ではない行動や、無関係の他者の死などの犠牲を求める。それが登場人物感でぐるぐるまわり、結局は辻褄があって、いろいろな問題が解決する。俯瞰すれば、最初からパズルを組み合わせるだけの脚本だが、少しずつ小出しにしたり、伏線をはったり、緻密に計算された数学的な脚本の勝利といえるだろう。
2019年極私的映画ベスト20 その2(20位から11位と特別枠1)

 年が明けて、いよいよ明日はトップ10の発表を。

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Posted by 仲村オルタ at 14:00
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台湾より沖縄復帰後1年で関西へ。まさかの東京暮らしを経て、流れ流れて今は沖縄暮らし。
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