2014年08月28日

諸星大二郎原画展と攻殻機動隊大原画展

 普段はコミックやアニメーションの原画展とはあまり縁がないのだが、気になる原画展がいま、阪神百貨店梅田本店で行われていたので、早速見てきた。ひとつは、幻想漫画の大御所諸星大二郎氏の原画展。もうひとつは、コミック&アニメーション「攻殻機動隊」の原画展だ。

諸星大二郎原画展と攻殻機動隊大原画展

 諸星大二郎氏は、74年デビューなので、個人的には少年期に読んでいてもおかしくない年なのだが、私が知ったのはここ十年以内と比較的最近のことだ。作家k氏から名前をきいて、調べてみて、何冊か読んだ。作家k氏の作風とも通じるものがある。不条理、郷愁、不安、そして死とエロス。全身顔だらけの謎の巨人カオカオ様が登場する「カオカオ様が通る」など、【ああやられた感】の強い作品も多い。
 緻密に描かれた原画をみて、気の遠くなる根気を想像する。物語をつくりながら、絵を描くコミックに対して、文章だけで世界をつくる人の立ち位置を思い、その使命というか、必要水準を強く意識する。
 また、限定刷りの版画が売られていて、なかでも「不安の立像」の表紙の版画がとても気になった。安くはないが、手の届かぬ価格ではない。欲しいのだが、家に飾ったら恐れられるかな、などとつまらないことを考える。物書きの端くれの端くれらしく、原画集を買うなら全作揃えたほうがいいような気もする。会期はあと5日あまりあるので、もう少し悩んでみよう。

諸星大二郎原画展と攻殻機動隊大原画展

 もうひとつは、「攻殻機動隊」の原画展だ。初出から25周年ということらしい。
 攻殻機動隊というのは、面白い経緯を辿っているコミック/アニメーションで、士郎正宗氏が描いた原作コミックは単行本3巻あまりしかないが、原作の世界観や登場人物を借りたアニメーションが、原作供給終了後おおざっぱにいえば3世代作られている。原作は難解で、ストーリーも理解しがたいのだが、デジタルネットワークが世界を支配する世界観、電脳、AI、ネットワークのなかの生命、ゴースト(移植などデジタル処理可能な魂)などの要素は、インターネットがまだ学術ネットワークだった1989年に描かれていたというのは、驚愕するばかりだ。94年に押井守氏によって映画化された映画「攻殻機動隊 Ghost in the shell」は美しい傑作で、「マトリックス」ほかハリウッド映画に対して、世界観、ストーリーなど創作の根幹部分のアイデアを発火させている。
 個人的には、ウダウダと書いていてまもなく(ようやく)再発火しそうな「クラウド99」を刺激するために、最近よく読んでいる。ここでもまた、物語と絵を同時に描くコミックに対して、小説はどんな優位があるか、どんな責任があるか、どんな創作が可能か考える。刺激的なふたつの展覧会であった。

諸星大二郎原画展と攻殻機動隊大原画展諸星大二郎原画展と攻殻機動隊大原画展
不安の立像(版画購入迷ってる)とカオカオ様

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Posted by 仲村オルタ at 23:07
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台湾より沖縄復帰後1年で関西へ。まさかの東京暮らしを経て、流れ流れて今は沖縄暮らし。
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