2006年01月06日

●島コラム小 130 映画『海流』とさよなら名護シアター

●島コラム小 130 映画『海流』とさよなら名護シアター

1)
 映画『海流』は2005年夏に〈おきえい通り夏祭
り〉会場で約半世紀ぶりに上映された。全部で7巻あ
るはずのフィルムのうち6巻が2000年に見つかっ
たものの、5巻目だけが紛失していたために再上映で
きなかったのだが、おきえい通りの名前の由来となっ
た沖映本館のかつての社長の故・宮城嗣吉氏の遺族か
ら5巻目が発見されたとの連絡が桜坂劇場に届けられ、
おきえい通り及び桜坂劇場で念願の公開がかなったと
いうことだ。ストーリーは次段に記すが、一言で言え
ば血湧き肉躍る冒険活劇(のはず)だ。ストーリーは
さておいて、この映画に映し出される半世紀前(もち
ろん復帰前)の沖縄の姿は、多くのウチナーンチュの
胸を別の意味で高鳴らすものだ。実際に、夏祭り会場
では映画そっちのけで昔話に興じるおばあもいたくら
いだ。

2)(物語)チラシより
 船が難破して、ただ一人大海を漂流する大木実(俳
優名・以下同様)。彼を助けた船は、なんと密輸団の
船。漂流者を助けるのが海の男の掟という〈謎の男〉
南原伸二と、犯罪の発覚をおそれる他の密輸団メンバー
との内輪もめから、再び海に落とされる大木。しかし、
必死の思いで沖縄本島にたどりつき、岡田茉莉子演じ
る島の娘と出会う。そんな大木の前に再びあの密輸団
が姿を現した!
 敵との友情、そして決闘。美女との恋、キザな決め
台詞。沖縄の美しい風景をバックに展開する海洋活劇
ロマン。

3)
 人もまばらな国際通り久茂地付近、南部の一面サト
ウキビ畑の野原、あんまり印象の変わらない桜坂近辺、
波の上近辺、壷屋近辺や、かつて琉球大学の校舎があ
った首里城跡など、映し出される風景は、わたしのよ
うに当時を知らない者にとってもとても懐かしいし、
時の流れを思うだけで物語とは無関係に胸がつまりそ
うになる。話自体は、本当にこれ新田次郎(八甲田山
ほか)原作なの、と思うくらいトンデモ話なのだが、
あまり気にしていても仕方ない。沖縄タイムス記者と
して登場する渡辺文雄をふくめ、たいていはヤマトン
チュ役者が演じているのも気にしても仕方ない(これ
は70年代につくられた「沖縄やくざ戦争」とかも同
じことだ)。ひょっとしたら松竹にも残っていないか
もしれない貴重なフィルムなので、毎年上映をしても
らうか、あるいはDVD化してもらいたいものだと思う。

4)
 名護シアターは本島北部唯一の映画館として、何度
も危機を迎えながら踏ん張っていたのだが、2005
年12月末をもって閉館することとなった。その閉館
する最終日に、沖映から借用したはずのフィルムをま
わした。映画館がまたひとつ本島からなくなった。一
方で、南風原ジャスコ付近にまたシネコンが出来たり
もするのだが、座るとスプリングが思い切り沈みこむ
ような座り心地の悪い赤い椅子の、こうしたレトロな
劇場がひとつ、またひとつとなくなっていくのは寂し
い限りである。壁にいくつも扇風機の並ぶ名護シアター
は、どことなく学生時代によく通った一乗寺の映画館
を彷彿させた。

5)
 おきえい通りの復活ロードショウ以来、8月、10
月、そして名護シアター最終日と何度も上映してきた
この「海流」だが、松竹に無断で上映しているのがバ
レたのか(そんなことはないはずだが)、いよいよ来
る1月14日~20日に桜坂劇場で最終上映となるら
しい。この機会に、すべての桜坂フリーク、古き良き
時代フリークはぜひとも観てほしいものだ。

(なかむらおるた・書き物一切)

桜坂劇場「海流」インフォメーション
http://www.sakura-zaka.com/lineup/m0510/051022_kairyu.html

♪今日の1曲 雪が降る町:ユニコーン
(寒いけど、さすがに雪は降ってない)

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Posted by 仲村オルタ at 00:31
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職業:書き物一切。
職人のごとくただ書くのみ(としたい)。
公式サイト alt99.net
台湾より沖縄復帰後1年で関西へ。まさかの東京暮らしを経て、流れ流れて今は沖縄暮らし。
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