2004年12月31日

●島コラム小 88 2004仲村オルタを回顧する

1)
 オキナワで生活を初めて二年目の2004年は、わたしにとっ
ては劇的な変化はなくとも、着実なきっかけを掴んだ年となった。
仲村オルタ名義の小説を4本書き(うち1本は推敲中につき未完)、
3本を地元の文学賞に応募した。そのうちの一本が、運良く「九
州芸術祭文学賞沖縄地区優秀賞」に選ばれた。「ビューティフル
・ワールド」というこの小説は、ラティーノのダンサーとうちな
んちゅの破滅的な恋愛話なのだが、夏に観た「華氏911」や沖
国大ヘリ墜落事件の影響を色濃く受けているような気がする。タ
イトルやテーマはイギリスのバンドcold playの"don't panic"と
いう曲からインスピレーションを受けている。これまではオキナ
ワに住み、オキナワのことを書いていこうという意識が強かった
のだけれども、今ではそういう意識は以前よりも低くなっている。
地方予選最優秀作とはいえ、過去の名義のものも含め、「おめで
とうございます、決まりました」と電話がかかってくるのは初め
てのことだったので、とても嬉しかったし、選考していただいた
又吉栄喜氏にはとても感謝している。ただし、これは小さなきっ
かけに過ぎない。これからも、オキナワに住んでいなければ書け
ないものもたぶん書いていくだろうが、あまりそのことにこだわ
らずテーマを選んでいきたいと今は考えている。余談だが、この
間「冬のソナタ」を観ていて、「世界はこんなに美しいのに、あ
なたは亡くなった人のことばかり考えている」という台詞が出て
きて驚いた。思う対象が亡くなった人ではないけれど、拙作「ビュー
ティフル・ワールド」のテーマと重なるからだ。確かに、6月頃
このドラマは見ていたのだが、まったく意識することなくこの小
説を書いていた。パクリというほど酷似していないし、テーマも
異なるし、本人もその意識がまったくないので大丈夫とは思うが、
テレビを観ていてかなり肝を冷やした瞬間だ。

2)
 その他の3本のうち、2本は地元新聞社主催の文学賞に応募し
たが、結果は伴わなかった。タイムス文学賞に応募した「犬の失
踪、ビジュルの再来」は、海で子供が拾ってきた石がきっかけと
なり自己の現実を再認識するオキナワに嫁いできたヤマトンチュ
の話。こちらもオキナワを舞台にしているし、ビジュルなどオキ
ナワの要素を盛り込んでいるが、所謂土着的な小説ではない。今
思うに、どんな物語なのか自分でもすぐに説明できないところか
らすると、小説のテーマが曖昧すぎたと言わざるえない。新報文
学賞に応募した「黒い人、眠る人」は、沖国大に落ちたヘリコプ
ターのイメージから派生した無関心、無知を警告する短編小説。
こちらは、40枚という枠がきつすぎて、最初からこじんまりと
まとまりすぎて、一体何が言いたいのか分からなくなってしまっ
た感はある。ただ、あの事故を自分なりに受け止め、今しか書け
ないものを書いたということで、個人的には愛着もある小説だ。
無関心や無知はそれだけで既にひとつの暴力なのだ。以上の短編
3本を生み出すきっかけになったのは、未完結(未完成でもない)
の350枚程度の中編「上等な人生 石と拳銃」だ。こちらから
派生したキャラクターが、「ビジュル」や「ビューティフル・ワー
ルド」で活躍してくれたのでよしとしよう。次の仲村オルタ#5
に着手するか、この小説を完成させるべきか今悩んでいる。

3)
 受賞については、自分で予想していたよりも、自分自身ではクー
ルに受け止めている。文章を書いていて、なんでこんなに言葉が
出てこないんだろうと自分が腹立たしく思うことも増えた。ピー
ク時に比べて、読む量が減っているので、どうしてもアウトプッ
トの質が落ちてくる。しかし、冷静に考えてみると、移住二年目
にしては、きっかけを掴んだという意味ではまずまずの成果を残
した2004年となった。気がつくと、漢字+カタカナの特に女
性のニューフェイスがいろいろ出てきている。加藤ローサ、木村
カエラ、山崎ナオコーラ・・などなど。仲村オルタがそれに続く
かどうか(続きたいのかどうかさえ)よく分かりませんが、まず
は書くのみ、書くことによってこそ道はひらけると思い、精進し
たいと思います。来年もよろしく御願いいたします。

(短況)
 スマトラ島沖地震の大変な被害には他人事じゃない恐怖を感じ
ています。プーケットやランカウイなどは結局行ってませんが、
何度も旅行先の候補になっていたし、情報がなかったなかでは相
当な揺れがない限り、浜辺で津波の危険を察知することなど不可
能に近い。海に潜っているときに起きていたらどうなっていただ
ろう、コテージで眠っているときに起きていたらどうなっていた
だろうと考えた。災害だらけの申年でしたが、来年は穏やかな一
年がやってくることを切に願う。亡くなった方のご冥福をお祈り
申し上げます。おるた。

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Posted by 仲村オルタ at 08:00
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仲村オルタ
仲村オルタ
職業:書き物一切。
職人のごとくただ書くのみ(としたい)。
公式サイト alt99.net
台湾より沖縄復帰後1年で関西へ。まさかの東京暮らしを経て、流れ流れて今は沖縄暮らし。
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