2008年07月21日
黑暗騎士 the dark knight
この映画は「選択」をめぐる物語だ。死をめぐる選択、生き様をめぐる選択・・コインの裏表を選ぶ(そう、トゥーフェイスのように)かのように、様々な選択が散りばめられている。それは一方が完全に正しく、一方が完全に誤りというものではない。どちらを選ぶかは、主観に委ねられる。ゆえに、葛藤し、苦しむのだ。
最近では、映画の予告編が面白くなりすぎて、本編を見たときにがっかりするケースが多い。「ダークナイト」は久しぶりに、予告編以上の緊張感と興奮に満ちた映画だ。ヒース・レジャーの演じたジョーカーは下馬評どおり、"素晴らしい"狂人ぶりだった。ニコルソンの幻影を確実に払拭し、自身のスタイルを築く余裕すら感じさせた。ジョーカーはバットマンを倒そうとしていない。むしろ自分の快楽のために、バットマンを必要としている。そしてバットマンもまた自分を必要としていることを自覚しているのだ。この希有なキャラクターをヒース・レジャーは完璧に演じた。ほんとうに惜しい俳優を亡くしたと改めて思う。監督・クリストファー・ノーランにも前作とも、傑作ティム・バートン版とも異なるスタンダードを作り上げようという気概が感じられる。名優や個性的な俳優に囲まれ、かな苦悩を演じたバットマン:クリスチャン・ベイルも存在感を残す。
アメリカではオープニングで記録的なヒットだという。当然だろう。良い脚本、良い映画がヒットしなければ、映画は廃ってしまう。クリエイターの端くれとしては真剣にそう思う。その内容のダークさとは裏腹に、映画の将来に希望の火を点すエポックメイキングな映画となった。
Posted by 仲村オルタ at 22:41