2008年03月01日

県立博物館・美術館へ行く

 短期間の沖縄滞在の機会があったので、おもろまちに去年できた博物館美術館へ行ってみた。期待半分、どれ見てやろうかといった挑戦的意図半分。美術館はちょうど開館記念展示の最終日だった。

 エントランスホールで亀島良泉さんのグンデルサンシントリオが演奏をしていた。グンデルサンシンの演奏を聴くのは初めてのことだ。グンデルのミュートされたガムランの音は心地よくて眠ってしまいそうだ。

県立博物館・美術館へ行く

 美術館の展示は、オープニングということもあって素晴らしかった。沖縄の現代美術を包括的に紹介している。ぼんやりと眺めていてもその時代性、時代のなかでの必然性が鮮明に浮かび上がる。何名か出展している知り合いの展示も素晴らしかった。木村伊兵衛の撮った沖縄の写真は初めて見たが、恐ろしく格好良かった。太郎師匠の写真もプリントでは初めて見た。沖縄が誇る映像作家高嶺剛監督の映像作品も時間があればたっぷり見ることができる。

 ただ同時に心配になった。これが精一杯なのではないかと思えたのだ。オープニング展示なので気合いのいれようは並大抵のものではないだろうが、このテンションで企画展を続けられることはおそらく予算的にも難しいだろう。

 また、沖縄の美術館だから沖縄にこだわるべきだし、沖縄でしか出来ない展示をすべきかもしれないが、それだけの展示ではネタがつきるだろうし、展示のクオリティも今回よりもよいものは出せないだろう。この美術館が沖縄以外の展示をするかしないか、どのようにするかが興味のあるところだ。

 博物館は予想外に楽しかった。民俗学的な常設展示はじっくり見てみたいものだ。現代史を追うとどうしても、平和祈念館などのコンセプトとかぶってしまうので、もっともっと民俗学的アプローチを重視してほしいと思う。

 ただ、何よりも不満なのは料金が高すぎる。美術館重視の僕は、美術館企画展+博物館常設を見たのだが、1400円もするのだ。この強気の料金設定は、あまり興味のない人が気軽に訪れようと思えるものではない。台中では、素晴らしい国立現代美術館が入場料無料だったことに驚いた。普段現代アートに触れることのないであろう家族連れが楽しんでいた。箱にかける費用を抑えて、その分ランニングコストを抑えることが出来ればいいのだが、現在の行政の予算の仕組みではそれはできない。残念だ。

 一方で当日芝居「人類館」を無料で観覧することのできるイベントをやっていた。あまりにも多く並んでいるので断念したが、それほど人気なら少しくらい料金をとってもいいのではと思った。高い入場料金で得た収益を無料イベントに還元するコンセプトならそれでもいい。そうとは思えないので、少し心配になった。博物館は広く県民に親しみがもたれそうだが、美術館のほうは県内の愛好家も、ふつうの県民も、観光客も誰も好まない箱ものになってしまう危険性がある。
 まあ、評論家のつもりもない元美術評論家モドキ分際で心配してもしかたないことなのだが。


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Posted by 仲村オルタ at 11:18
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台湾より沖縄復帰後1年で関西へ。まさかの東京暮らしを経て、流れ流れて今は沖縄暮らし。
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