2016年09月16日

Marvel vs.DC

★「スーサイド・スクワッド」を観た。最近はMARVELに押されっぱなしのD.C.の久々の快作に思えた。悪党どもが世界を救う話は、MARVELのシネマティック・ユニバース最高傑作と言われる「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」に似た構図となり、音楽の使い方など確かに同じムード漂うものだが、「スーサイド・スクワッド」が快作となったのは、ジョーカーの存在である。スーパーヴィランvs.ヴィランズの闘いの構図のなかで、ジョーカーだけはどちらの味方になることもなく、ただ自分の美学のためだけに行動する。この歪な三つ巴感に、映画的快楽が伴うのだ。ジョーカーを演じたジャレット・レトはとても良かった。ヒース・レジャーやジャック・ニコルソンと比較してどうのこうのという論評もあるが、先代?をリスペクトしながら新たなキャラクターを作ろうとする意気込みを感じた。もちろんそれを支えるのは俳優の演技力である。

Marvel vs.DC

★どちらかというと私はDC派だった。それはバットマンがDC所属ということによるところが大きい。クリストファー・ノーランのダークナイトはいまでもおそらく極私的歴代NO.1映画だろうし、遡ればティム・バートン版のバットマンも大のお気に入りだった。要するにバットマンが好きなのだろう。ところが、ノーランも関与する「マン・オブ・スティール」以降のザック・スナイダー版DCワールドの世界観は、個人的にあまり好みではない。闇を抱えたスーパーマンがあまりピンとこないのかもしれない。とにかく派手にズズズズドドーンと世界を破壊するザック・スナイダーの絵作りが好きではないのだ。今年公開の「バットマン v. スーパーマン」も同じだった。バットマンが登場するにもかかわらず、絵的に映画的快楽がないのだ。世界をまもるために世界を破壊してしまうことへの葛藤も、すでにライバルMarvelのアヴェンジャーズでテーマとして採用済みである。

Marvel vs.DC

★一方のMarvelだが、劇場で鑑賞したアベンジャーズ2 エイジ・オブ・ウルトロンにも、ザック・スナイダー同様のズズズドドーンを感じて、ただただ幻滅した。アイアンマンも1本目は良かったが、2本目以降はワクワク感が減った。正義の味方の葛藤にはあまりに環境が違いすぎて感情移入できるはずなどない。Marvelについても、少し映画館から遠のいていたのだが、先日飛行機のなかで「キャプテン・アメリカ シビルウォー」をみて、少しまたMarvelのシネマティック・ユニバースへの関心が復活した。この映画におけるキャプテン・アメリカはまさにDC的なダークヒーローである。その前作「ウィンターソルジャー」も、もう少ししたらシネマティック・ユニバースと連携するという「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」も面白かった。まるでDC映画のやりたいところを研究し、先取りしているようにさえ思う。

Marvel vs.DC

★そうなのだ。最近このアメコミ二大勢力の映画の根底にあるテーマも、キャラクターの描かれ方も似てきている気がする。つまりそれは、ヒーローであることの意義と犠牲、世界を守る意義と犠牲に対する責任ということだ。DCのほうがややSF寄りのような気もするが、神であるソーが闘うMarvelも十分にSFである。ダークナイト・トリロジーで興行的にも映画の質としてもMarvelを圧倒したと思われたDCだが、正直なところここのところ押されっぱなしだ。ただ前提としては、家族で見ても大丈夫なMarvelと大人むけDCという路線はあると思うのだが、デッドプールが出てきたことでそれも崩れはじめている。

★デッドプールがMarvelのもうひとつの映画世界であるx-menのキャラクターとは知らなかった。日本では、そのことはまったく触れずに、ただのお馬鹿無責任ダークヒーローとして宣伝していたが、映画のなかにはプロフェッサーの「恵まれし子らの学園」も出てくる(が、プロフェッサーは出てこない)。個人的には、映画のキャラクターが観客に話しかけてくる映画は好きではない(映画的マジックが冷めてしまう)ので、この映画はそれほど好きではない。

Marvel vs.DC

★X-menといえば、この夏「アポカリプス」が公開された。新旧シリーズ融合の前作「X-Men: Days of Future Past」にくらべれば構造はシンプルで、悪役も最強なのだろうが(なんせ神なのだから)、あまり強くも怖くも感じなかったのがこの映画のすべてであろう。個人的にはとても好きな役者のひとりであるマイケル・ファスベンダー演じるマグニートの悲劇にもっとフォーカスすればよかったのにと思う。前作でx-menシリーズへのまさかの復活を果たしたブライアン・シンガーのx-menワールドはこれで一区切りであろう。次作はヒュー・ジャックマンのウルヴァリン引退作になるという噂があるが、マグニートやミスティーク主役のスピンアウトに期待したい。ミスティークは「アポカリプス」以後、最初の「x-men」でのマグニートとの協働に、どのようにしたらつながるのだろう?

★Marvelはこのあと、ベネディクト・カンバーバッチ主演の新キャラ「Dr.ストレンジ」、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーの続編、スパイダーマンの続編、ソーの続編などが予定されている。DCは「バットマン v.スーパーマン」に登場したメタヒューマンのキャラクターであるワンダーウーマンの話、DC版アベンジャーズのジャスティス・リーグ、新キャラのフラッシュ(フラッシュ・ゴードンではない)の話などが予定されているようだが、興行収入的に厳しければどうなるかわからない。

★個人的には独立派?のフランク・ミューラーのSin Cityや、駄作と言われながら個人的にはかなり評価の高いSPAWNの次回作に期待したい。製作されるかどうかもわからないのだが。

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Posted by 仲村オルタ at 18:00
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台湾より沖縄復帰後1年で関西へ。まさかの東京暮らしを経て、流れ流れて今は沖縄暮らし。
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