2009年04月05日

No Line on the Horizon

 原点回帰。
 これまでこの言葉はU2というバンドに何度使われたことだろう。
 30年近いキャリアのなかで、確固たる独自性を維持しつつ常に革新しつづける。プロデューサーである盟友ブライアン・イーノが「最高傑作」と言うこのアルバムにも、「原点回帰」という言葉がレビューに飛び交う。わずか2作前の「All that You can't Leave Behind」でも頻繁に使われた言葉だ。20年後に振り返れば(20年後もこのバンドは現役であることに微塵の疑いもない)、いわゆるデジタル3部作を発表した90年代に境界を切り開いたのに対して、00年代の3部作は「原点回帰3部作」と言われるのだろう。もちろん、ただ原点を振り返っただけではない。この3作が過去の焼き直しでないことは、セールスとレビューが証明している。
 U2みたいな音はほかに溢れているが、U2の音は他に存在しない。アルバム冒頭のタイトル曲”No Line on the Horizon"を聴いただけでそう確信した。
 全体的なエモーションも、個々の特徴(たとえばエッジのギターリフ、感情豊かなボノのヴォーカルスタイル、リズムライン、挿入されるキーボードなど)はまさしくU2そのものだ。やり過ぎの印象も、聞き飽きた印象もまったくない。特に2曲目"Magnificent"は、デジタル時代も含めたU2の音の要素が次々と惜しみなく登場し、聴いていてうれしくなるほどだ。

No Line on the Horizon

 私事になるが、僕はこのアルバムは新しい命の誕生する現場へと向かう空港バスの中で何度も何度も繰り返し聴いた。誕生のあと、釜山の街で、台北の街で、沖縄で、そして東京で聴いた。「海と空を隔てるもなんてない」・・叙情的な歌詞に涙した。絶望的な状況のなかでの希望。僕にとってはこの慌ただしくもこれまで感じたことのない幸せに震えた2009年3月の音楽だ。U2の傑作はこれまで何枚もあるが、個人的にも忘れられない一枚となった。

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Posted by 仲村オルタ at 13:27
この記事へのコメント
I know a girl who’s like the sea
I watch her changing every day for me
Oh yeah
Oh oh oh oh oh oh oh

海みたいな女の子を知っている。
毎日僕のために変化する彼女をみている。

One day she’s still, the next she swells
You can hear the universe in her sea shells
Oh yeah
Oh oh oh oh oh oh oh

静まりかえっていると思えば、大きくうねる。
彼女の貝殻に耳を当てれば、宇宙が聞こえるだろう。

No, no line on the horizon, no line
水平線なんてない
水平線なんてないんだ。

I know a girl with a hole in her heart
She said infinity is a great place to start
Oh oh oh oh oh oh oh
心に穴が開いている女の子を知っている。
彼女は「無限」が素晴らしい出発点だと言った。


She said “Time is irrelevant, it’s not linear”
Then she put her tongue in my ear
Oh oh oh oh oh oh oh

時間なんて関係ない、それは直線的じゃないから、と彼女は言った。
それから彼女は僕の耳に舌を押し込んだ。

No, no line on the horizon
No, no line
No, no line on the horizon
No, no line

海と空を隔てる線なんてないんだ

The songs in your head are now on my mind
You put me on pause
I’m trying to rewind and replay

きみの頭のなかにあった歌が今僕の心の内にある。
きみは僕のポーズボタンを押す。
僕は巻き戻してリプレイしようとする。


Every night I have the same dream
I’m hatching some plot, scheming some scheme
Oh yeah
Oh oh oh oh oh oh oh

僕は毎晩同じ夢を見る。
僕はあることを企てている、僕には計画があるんだ。

I’m a traffic cop, rue du Marais
The sirens are wailing but it’s me that wants to get away
Oh oh oh oh oh oh oh

僕は交通警官で、マレ通りにいる。
サイレンが鳴っている。
それは僕を追い出そうとするんだ。

No line on the horizon
No, no line
No, no line on the horizon
No, no line

海と空を隔てるものは何もない
Posted by 仲村オルタ仲村オルタ at 2009年04月05日 13:47
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仲村オルタ
職業:書き物一切。
職人のごとくただ書くのみ(としたい)。
公式サイト alt99.net
台湾より沖縄復帰後1年で関西へ。まさかの東京暮らしを経て、流れ流れて今は沖縄暮らし。
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