2017年12月29日

2017年極私的映画ベスト20 その1(20位から11位)

 今年はよく映画をみた。創作の筆は事実上ストップしており、同時に本を読むペースも落ちている。映画を観るのは創作の神様と唯一の交信の手段のような気がする。スマホ画面での分割鑑賞も含めれば、おそらくここ数年では一番見ている。
 今年はあたりの映画が多かったと思う。ゆえに、10本ではなく20本(+特別枠の数本)を選んでみた。このランキングは極私的なもので、映画の質を客観的に示したものではない。ただ、やはり自分が創作者の端くれである視点は忘れてはいないだろうと思う。劇場公開が2016年12月から2017年11月までの映画より選出している。

特別枠 マイ・ライフ・ディレクテッド・バイ・ニコラス・ウインディング・レフン(My Life Directed By Nicolas Winding Refn) 監督 リヴ・コーフィックセン
2017年極私的映画ベスト20 その1(20位から11位)
「ドライヴ」で一気に世界的にも有名な監督となったレフン監督が、その次作にあたる「オンリー・ゴッド(Only God Forgive)」を葛藤しながら苦闘しながら異国の地バンコクにて撮影する姿を、妻で女優のリヴ・コーフィックセンが監督・撮影した異色作。ホドロフスキー監督のタロット占いに励まされ?、作るべき作品として「オンリー・ゴッド」に挑むが、思うように撮れず、失敗作だと嘆き苦悩するレフン。カメラをむける妻は、励ますでもなく、私の人生はどうなるのと却ってレフンを追い詰める。挙句のはてに、たかだか10歳そこそこの娘には「たかが映画よ、世界のおわりじゃない」と言われる始末。
 レフン監督は「ドライヴ」を超えるどころか、それに匹敵する映画すらまだ撮るに至っていないと個人的には思う。今年公開された「ネオン・デーモン」も「オンリー・ゴッド」同様に、おそらくは作ろうとした意図と異なった方向に転がってしまったような気がする(そう思うとデヴィッド・リンチは凄いなと改めて思う)。それでも、この記録映画を見たいまは、ずっと見続けたい監督、ずっと応援したい監督となった。創作者は家族のなかでも孤独なのだとつくづく思う。

第20位 ワンダーウーマン(Wonder Woman) directed by Patty Jenkins★★★
 格好いいキャラクターだ。アカデミー女性監督のこのアクション映画はやたらと評判はよいが、プロットや設定がとびぬけて素晴らしいというわけでもないと思う。今年はDCはマーヴル・アベンジャーズ対抗のヒーロー大集結作ジャスティス・リーグを公開したが、こちらは更に空気みたいな一本だった。DC派を卒業しようか。DC好きというわけではなく、ただノーラン版ダークナイトが好きなだけではないか。そう思った。
2017年極私的映画ベスト20 その1(20位から11位)

第19位 マリアンヌ(Allied) directed by Robert Zemeckis)★★★
 ジャスティス・リーグと異なり強烈な葛藤をプロットの主軸にすえた快作。ワンダー・ウーマンを演じるガル・ガドットは美しくセクシーでしかも格好いいが、この映画でマリアンヌを演じるマリオン・コティヤールは、その大きな瞳でみつめられるとなんだか古傷をつつかれるような気になる。古典的なプロットの葛藤映画を熟練の技でまとめた。
2017年極私的映画ベスト20 その1(20位から11位)

第18位 ゴースト・イン・ザ・シェル(Ghost in the Shell) directed by Rupert Sanders★★★
 攻殻機動隊のハリウッド実写版。評判はあまりよくないようだが、確かにこの映画だけを観ただけではさっぱりなのかもしれない。押井版のアニメと宗方版原作の要素が全編に散りばめられているので、その差分でイメージを補いながら見ているということだろう。改めて押井版の攻殻機動隊とイノセンスは素晴らしいと思えた。
2017年極私的映画ベスト20 その1(20位から11位)

第17位 アトミック・ブロンド(Atmic Blonde)  directed by David Leitch★★★
 ここまでアクトレス優位の映画が続いた。この映画のシャーリーズ・セロンと、ゴースト・イン・ザ・シェルのスカーレット・ヨハンソンはひょっとしたら交換しても演じられたかもしれない。この映画はプロットと作り手のこだわりに差があった。羅生門のように回想として話はすすむ。しかし、それは正確な回想ではない。しかも主人公以外の視点もある。文法的におかしい気もするが、それについて矛盾は感じないのは、主人公の想像の映像化であることもありうるからだろう。映像、回想はそのひとの主観的なもので、必ずしも真実ではない。失敗すれば、映画は破綻するが、この映画は無事成立している。
2017年極私的映画ベスト20 その1(20位から11位)

第16位 ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー・リミックス(Guardians of the Galaxy Vol. 2) directed by James Gunn★★★
 前作は実はMarvel隠れた最高傑作と言われていたが、たしかに面白かった。息子に見せたら、息子も気に入ったようで、「ジュラシック・ワールド」「スター・ウォーズ」に次ぐ映画館鑑賞作となる。今回は親父泣かせの映画だった。話は無茶苦茶だが、今年映画館で泣いた映画はこの映画ともう一本くらいしかない。
2017年極私的映画ベスト20 その1(20位から11位)

第15位 ブランカとギター弾き(BLANKA) directed by 長谷井宏紀★★★
 イタリア製作、日本人監督によるフィリピンを舞台にした短編?映画(75分)__マニラのスラムに暮らす孤児のブランカは、母親を金で買うことを思いつき、盲目のギター弾きピーターと旅に出る。ピーターから得意な歌でお金を稼ぐことを教わったブランカは、レストランで歌う仕事を得てお金を稼ぎ、計画は順調に進んでいるかに思えた。しかし、そんな彼女の身に思いもよらぬ危険が迫っていた__というもの。個人的には、桜坂劇場復帰の年に観た何本かの一本で、チラシを手に取るまでそんな映画の存在自体も知らなかったのだが、観てよかった映画だ。東京にいたら、観ることがなかったかもしれない。悲惨な状況のなかで悲惨さを感じさせないひたむきさが映画全編を貫く。
2017年極私的映画ベスト20 その1(20位から11位)

第14位 ドント・ブリーズ(Don't Breathe) directed by Fede Alvarez★★★
 ヒットの仕方と作品のテイストから、去年のIt followsと比較される本作。盲目の老人宅に盗みにはいった若者が思わぬ逆襲に会い、息を潜めて逃げまくる映画だ。盲目の老人はまったく悪くないが、「逃げろ」と感情移入するのは盗みに入った若者たちのほうという、逆転構造がよいのだろう。ただ、It followsのようなスタイリッシュさはなかった。もう一本、似たような公開のされ方の映画に、Get Outがあるのだが、こちらは個人的にはまったく響かなかった。設定にリアリティが感じられなかったこと、ゆえに怖くなかったことがあるのだろう。
2017年極私的映画ベスト20 その1(20位から11位)

第13位 虐殺器官 directed by 村瀬修功★★★
 原作は伊藤計劃の代表作であり、極私的には日本SF小説史上最高傑作といえる小説。正直なところ、原作のほうが数倍良いのだが映画としても及第点だろう。小説では現実にありそうなSF兵器が多数でてくるが、そのガジェットの楽しさがあまり映画には出ていないのは残念だ。公開延期などゴタゴタしていたが、無事公開できてよかった。ハリウッドあたりで実写映画化されるとよいのだが。虐殺を引き起こす言語、という発想はあらためて素晴らしい。
2017年極私的映画ベスト20 その1(20位から11位)

第12位 アンダーワールド ブラッド・ウォーズ (Underworld: Blood Wars) directed by Anna Foerster  ★★★+
 ハリウッド大作というわけでもなく、どちらかというとB級路線で、それでも粘り強く続いているアンダーワールドシリーズの第5作。ヴァンパイア族とライカン(狼男)族の闘いに、ハイブリッド、お互いの内部抗争と裏切りが絡み、誰が味方なのか敵なのかわからないなかで物語が続く。実は結構好きなシリーズでもある。何がよいかと言えば、この構造に創り手的に惹かれているのだと思う。が、あまりにもマイナー過ぎるのか、東京にいてこの映画の公開に気づかず、結局DVDで観た。ケイト・ベッキンゼールはこのシリーズ以外で観たことがないが、闘う女のキャラクター設定はどれもよく似ているなと思ったりもする。
2017年極私的映画ベスト20 その1(20位から11位)

第11位 T2 トレインスポッティング(T2 Trainspotting) directed by Danny Boyle)★★★+
20年ぶりのトレインスポッティングの続編。舞台設定も前回の二十年後だ。カネを持ち逃げしたマーク・レントンが故郷エジンバラに帰ってくる。演じるのはユアン・マクレガーなのだが、年をとったなとつくづく思う。劇中の人物も、演じる役者も、見ている我々も等しく年をとっている。なんだかそれだけで切なくなる。二十年間何をしてきたのだろうと振り返るのは、マーク・レントンだけじゃない。同窓会的で散漫かと予想したが、以外にもきちんとまとまっていた。ジャンキーでどうしようもなく子供とも離れ離れになってしまったスパッドが、文学的才能に目覚め、自伝的小説を執筆する。物語のなかでその展開だけが唯一の救いだ。
2017年極私的映画ベスト20 その1(20位から11位)

トップ10は次回に。

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Posted by 仲村オルタ at 13:45
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台湾より沖縄復帰後1年で関西へ。まさかの東京暮らしを経て、流れ流れて今は沖縄暮らし。
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