2017年12月21日

レビュー スター・ウォーズ 最後のジェダイ(ネタバレあり注意)

 筋金入りのスター・ウォーズファンを定義するとしたら、どんなだろう?
 10代の最も多感な頃にエピソード4をみてときめいた経験をもつ(僕もぎりぎり10歳だった)、シリーズのなかで最高傑作を訊かれると迷わず「帝国の逆襲」と答える、オープニングクロールを観るときはもちろん想像するだけで鳥肌が立つ、 スクリーン一杯にミレニアム・ファルコンが駆け巡るだけで嬉しくなる……云々。
 エピソード8 最後のジェダイは、賛否別れるという。批評家の評判は概ねよいが、ファンは激しく反発する人も多いという。なぜだろう。僕は絶賛派だ。エピソード7フォースの覚醒の懐古趣味も嫌いではないが、むしろこのチャレンジングなエピソード8を評価する。劇中カイロ・レンが言うように、過去と決別し今の自分を肯定する、という強いメッセージを帯びた意欲作。監督・脚本をつとめたライアン・ジョンソンの勝利である。以下ネタバレあり。
let the past die. Kill it, if you have to. That’s the only way to become what you are meant to be!

レビュー スター・ウォーズ 最後のジェダイ(ネタバレあり注意)

 繰り返しになるが、前作「フォースの覚醒」は映画的に褒める要素は殆どないにも関わらず、それでも好きか嫌いかで言えば好きな映画で、2016年(公開は2015年12月)の極私的No.1となった。エピソード4のストーリーをなぞり、戸惑いを生むような要素を排除し、馴染みのフォーマットに身を委ねる。それが至福の喜びであること理解した自らスター・ウォーズファンであるJJエイブラムスが、さあ、これがみんなの好きなスター・ウォーズでしょう、と提示した。エピソード7は制作意図も、プロットも、実質的なリブートだった。
 ではこの最後のジェダイはどうか? それほど監督作があるわけではないライアン・ジョンソンは、シリーズ最高傑作「帝国の逆襲」を強烈に意識しつつ、JJが仕掛けた謎をことごとく肩透かしをくらわせ、すべての伏線や予定調和にあっさりと決着をつけてしまった。ある意味では、エピソード5帝国の逆襲とエピソード6ジェダイの帰還で提示されたプロットラインを、すべて使い切ってしまった。
 この映画で最も美しかったのは、スノークの玉座の間での戦い、スノークをライトセーバーの遠隔操作で葬り去ったあと、レイとカイロ・レンが力を合わせて衛兵と闘う場面だ。「衝撃のスター・ウォーズ」との触れ込みは、このシーンのためにあるのだと思う。エピソード6でダースベーダーとともにルークがパルパティーン=ダース・シディアスを葬り去ったあと、何が起こったか? このシーンはエピソード9のためのシーンではないのか? エピソード6で息子ルークに対して、ダースベーダーが皇帝を倒して共に銀河を支配しようと誘っていたではないか。
 愕然としながらも、興奮して見ていると、その後の展開は更に予定調和を破壊する。光と影は再び袂を分かつ。
 その後、氷の惑星ホスを思い出させる塩の惑星でのバトルで、最後の見せ場がやってくる。カイロ・レンvs.ルーク。嫌味で素直じゃない隠居老人と化したルーク・スカイウォーカーが満を持してライト・セーバーを握るのだ。闘いながら、「反乱軍は今日滅ぶ、戦いは終わる、オマエは最後のジェダイになる」と言い放つかつての弟子に対して、クールに言い放つルークの台詞が素晴らしい。

Amazing. Every word of what you just said was wrong.The Rebellion is reborn today. The war is just beginning. And I will not be the last Jedi.
「素晴らしい。お前が今言った全ての言葉が間違っている。反乱軍は今日再び生まれ変わるんだ。戦いは始まったばかりだ。それに私は最後のジェダイではない」

 タイトル「最後のジェダイ」がこの台詞で複雑な意味をもつ。本作のテーマは過去との決別、そして新しい物語と葛藤のはじまり。それだけで胸が熱くなる。この挑戦をやりきったライアン・ジョンソンはビッグチャンスをつかんだ。
 たとえ、重力のない宇宙で重爆撃がありえないだろうが(実際にはすぐ真下に星を意図的に描いているので、星の重力があると説明できるかもしれない)、フォースでできることがインフレしてようが(さすがにレイアの帰還は笑えたが、どのフォースもこれまでに定義された力の延長にあり、不自然な感じはさほどしなかった)、笑いが多すぎようが(アイロンはどうかと思うが、全体的にはバランスは良かったように思うが)、アベンジャーズっぽくなってようが(そこまで娯楽に徹している感じはしないが)、ルークにマトリックスはやってほしくなかろうが、レジスタンスが無策すぎて都合よく追い込まれていようが、こうした都合のよさはこれまでのスター・ウォーズにもあることであり、エピソード8はテーマと制作スタイルで新しい地平を切り開いている。そもそもオープニングタイトルで我々は魔法にかかる。少なくとも個人的には、その魔法がとけるような映画ではない(批判をする人にとっては、魔法が足らなかったということだろう)。
 さあ、全部使い切ってやったぞ、この先どうする?
 ライアン・ジョンソンの挑戦に、JJエイブラムスはどう答えるのだろうか。クリエイターの創造のバトルに胸が躍る。2年後が今から待ち遠しい。

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Posted by 仲村オルタ at 18:00
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台湾より沖縄復帰後1年で関西へ。まさかの東京暮らしを経て、流れ流れて今は沖縄暮らし。
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