仲村清司さんと行く「ほんとうは怖い沖縄」ミステリーツアー

仲村オルタ

2010年09月18日 21:27

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 ti-daブロガー限定の「ほんとうは怖い沖縄」ミステリースポット体験ツアーが運良く当選したので出かけてきた。

 「ほんとうは怖い沖縄」著者の仲村さん案内!ミステリーツアー

 僕はおそらくは職業柄か興味があるからか、こうしたスポットについての情報は持ち合わせているほうだろう。ツアー参加前には、伝奇的な話をベースとした土地探訪となるのか、あるいは平山夢明ばりの心霊スポットツアーとなるのか、どちらかなと考えていた。



 ツアーは首里龍譚池前の旧県立博物館跡地から始まる。「唄う商人」なる七海さんこと安積美加さんが、いきなり「耳切坊主」を唄い始める。北谷王子と耳切坊主の話は知ってはいたが、場所がここだとは知らなかった。だだっぴろい博物館跡地をぼんやりと見ながら、伝奇物語を聞く。「琉球国は武器を持たなかったのか」という歴史的なテーマについて諸説を聞く。うーん、どうやら、冒頭の予想は前者となりそうだ。この時点でそう思う。



 八重山のほうにむかっているとはいえ、今日は台風の影響で風が強い。雨も急に激しくなる。この後、僕も好きな聖地のひとつである大赤木のある内金城嶽にむかう予定は、大雨のためとりやめとなる。残念。車に乗り込んで、識名坂で遺念火の話をきく。遺念火の話もそうだが、琉球の古い怪談はやりきれない話が多い。そういえば、台湾に行く前に首里町歩きで此処に来たな、と思い出す。



 その後仲村さんお薦めのそばやで昼食をとり、糸数アブチラガマへ。戦跡というのは、こういう機会でもないと行くこともない。見ているとつらいし、気分が重くなるし、たくさん人が亡くなった場所というのは、やはり気の流れも悪くなるだろう。そう思うとなかなか行けない。ましてやひとりでは絶対に行けない。ヘルメットを被り、懐中電灯をもってガマへ。洞窟内はひんやりとしていて、思いの外悪い気は感じられない(そもそも感じやすいほうではないのだが)。内部で二度ほど、二、三十秒くらい全員で懐中電灯を切ってみる。水のしたたる音に敏感になる。匂いに敏感になる。暗闇のなかでは体中が感覚器官となる。ゆっくりと足を踏み外さぬよう歩いて外にでる。「死者が土地に呪縛されているのではなく、死んだあと解放されたことを思うこと、願うことが死者への弔いになる」というようなことを仲村さんはおっしゃっていた。確かにそうだ。外へ出たとき広がる森が気持ちよく感じた。墓碑に手を合わせる。今此処に僕が居るのは、こうした無名の方々の死に支えられている。こうして聖地は作られるのだろう。



 ツアー最後に斎場御嶽へ。たぶん、台湾から記者を連れて行って以来、ほぼ三年ぶりだ。前に整備された状況に驚いたが、今回は更に整備され、観光客が溢れかえっている状況に更に驚いた。五年以上前に、正月に僕は此処を訪れた。崖の上のウタキにのぼり、東から昇る朝日をみながら、心新たにした。あの道は既に封鎖されていた。自然の気は溢れているが、もはやここは拝所ではないようだ。拝所跡をみて、気持ちよくなる場所となった。もちろん僕もそれを評価する立場にある人間ではない。それでも、ああ気持ちいいな、と感じるこの空気だけは残っていてほしいと強く願う。



 ということで八時間あまりのツアーは終わった。仲村さんの人柄なのか、平山夢明的なところは微塵もなく、別のことを期待して参加すればがっかりする方もいることだろう。でも、それは本を読んでいれば自ずとわかることだ。仲村さんは、ご自身の体験をまじえて、目に見えぬ世界に畏怖を抱きながら、とても慎重にこの本を書いている。それがおもしろくない人はこのツアーに参加するべきではない。個人的にはもっとディープな世界を期待していたのだが、それはまた今度のお楽しみということだろう。

 ツアーの最後に安積美加さんから、安積さんが運営しているネットショップ沖縄ジョートー市場の、沖縄そばセットから八重山そばとやんばるそばのサンプルを頂いた(安積さん、ありがとう!)。昼もそばだったが、さっそく食べてみる。おお、確かにうまい。台湾に居るとき、ときどき無性に沖縄そばが喰いたくなるときがあったのだが、そんなときこれがあればな、と思った逸品だ。機会があれば、ヤマトへの贈り物にしようと思った。

 最後に今回のツアー参加のチャンスを与えてもらった、ti-daブログスタッフ、あそんじゃおきなわスタッフ、そして仲村さんに感謝いたします。ありがとうございました。

仲村オルタ

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